勉強しなければ、一気に体のガタがくる
定年退職後の生活の経済的な側面は、さまざまな難しい問題を含んでいます。拙著『83歳、いま何より勉強が楽しい』(サンマーク出版)で指摘しているのは、「誰にでもできてさまざまな効果があるのは勉強だ」ということです。それが収入につながれば一番よい。仮にそうならなくても、さまざまな効果があります。そして、勉強をすることに多大の出費は必要ありません。
60代になる前に、勉強と(会社外の)人脈を作ることができれば、理想的です。
コロナ禍で人との接触機会が減ったため、高齢者の活力低下現象が増えました。この予防のためにさまざまな取り組みが行われています(※1)。
コロナで高齢者の「フレイル」が増えたといわれます。「フレイル」(frail)とは、健康と要介護の中間的な状態で、筋力や心身の活力が低下した状態です。国際医療福祉大学のグループの調査によると、高齢者のフレイルの割合は、2017年に11.5%だったのが、2022年には17.4%に増えました。
この他にも、コロナの影響でフレイルが増加しているという報告が、いくつもなされています。外出自粛が長期間にわたったため、体を動かさなかったり食事が偏るなどして、体力が低下したのです。
※1:「コロナ自粛、増えたフレイル」朝日新聞、2023年6月25日
杖要らずの人が、自粛生活で車椅子生活に
また、コロナのために地域活動が中止になり、友人との交流や外出の機会が減ったことも大きな原因だとされています。集まりへの参加者が、コロナ前に比べると3分の1になったといわれます。人との会話が減る生活が続いたため、気持ちが落ち込んだりして、身体や認知機能に影響が出るのです。
なお、フレイルの基準としては、つぎのようなものが採用されます(※2)。
・体重の減少(意図しない年間4.5kg以上もしくは5%以上の体重減少)
・疲労感(「何をするのも面倒」だと週3~4日以上感じる)
・活動量の減少、歩行速度の低下、握力(筋力)の低下
フレイルの影響は深刻です。新潟大学の齋藤孔良助教らの研究チームの調査によると、高齢者のうちフレイルの人は、健康な人と比べて、季節性インフルエンザに1.36倍かかりやすいことが分かりました。また、感染した際に3.18倍、重症化しやすいことも明らかになりました(※3)。
自粛生活で家にこもっていた影響で、それまで杖もつかずに元気に歩いていた高齢者が、車いす生活になったケースも多いそうです。
※2:Linda Fried博士が提唱した「CHS基準」を元に、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターが2020年に改訂した「日本版フレイル基準」
※3:テレ朝news、2023年6月23日(注2)筑波大学大学院の研究グループの調査結果、2021年3月23日 NHKニュース