アメリカの大学が巨額の利益を得るカラクリ

なぜ大学の研究とスタートアップの数が大きく関係するかというと、アメリカで研究成果を大学の所有物とするバイドール法が成立し(1980)、研究成果をライセンス販売することで、大学が大きな利益を得るようになったからです。

遺伝子組み換えのジェネンティック社の場合、スタンフォード大学だけで230億円のライセンス収入がありました。

グーグルは創業時資金がなく、ライセンス費用を一部株式で大学に対して支払ったため、株式上場時にスタンフォード大学は400億円の利益を得ています。

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大学の知財のライセンスは、ほとんどベンチャー企業や中小企業向けに供与されています。

2020年のAUTMのサーベイでは、ライセンス提供先の6割がベンチャー企業を含む小企業や中小企業であり、大企業の割合は2割にすぎません。大企業にライセンスを安値で販売している日本の大学と大きな差があります。

ハーバード大学の基金の運用を見てみると、年間リターンは33.6%(2021年6月期)あり、期末の基金の残高は532億ドル(約7兆円)となっています。ハーバード大学は、トヨタを除くほとんどの日本企業を余裕で買収できるだけの財務力を持っているのです。

そして、大学の研究を支えるため基金から毎年20億ドル以上(約3000億円)がハーバード大学の運営経費として配分され、それは大学の年間収入全体の3分の1以上を占めています。学生全員を授業料タダにしても余裕で経営できる金額です。投資・運用実績は、標準的な株価指数であるS&P500をはるかに超えています。

投資先はオルタナティブ資産が中心(約7割)であり、最大の投資先は未上場株式、つまりスタートアップ企業の株式となっています。

これはハーバード大学だけではありません。ほとんどの有力大学は市場平均を超える高い投資リターンで基金を運用しており、そうした優れた運用パフォーマンスは主にスタートアップに投資することにより達成しているのです。

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