萩生田氏をめぐっては、麻生氏と茂木敏充幹事長が軽い処分を求め、首相の判断もあって、党の役職停止に落ち着いたが、近い将来の復権を見据え、次期総裁選に向けて「貸し」を作ったのではないか、との憶測も出ている。

協議に入る前日の4月1日には、茂木氏が処分対象者39人のリストを報道陣に配布した際、茂木派を離脱した関口昌一参院議員会長が参院11人を含むにもかかわらず、事前に知らされなかったとして反発し、茂木派「分裂」の余波を感じさせられる場面もあった。

「還流再開の判断に森氏が関与した」

岸田首相は今回の処分をどう考えたのか。首相にとって、安倍派元幹部らの処分を軽くすれば、世論の反発を招き、4月の衆院3補選やその後の国政選挙に不利に働く。重くすれば、今後の政権運営や次期総裁選で安倍派や二階派からの協力や支持が得られなくなるなどの懸念があるとされた。

首相は3月26、27両日、茂木、森山両氏とともに、都内のホテルで塩谷、下村、西村、世耕4氏から相次いで再聴取した。4氏は不正還流が続いた経緯について「全く分からない」と答えるばかりで、政倫審での質疑の域を出なかったという。こうした態度には安倍派を含む党内からの不満も大きく、首相が塩谷氏らを重い処分にしても、党内に大きな亀裂は走らないとの判断につながっている。

これに関連し、日本テレビは27日、4氏の中から「還流再開の判断には森元首相が関与していた」との新たな証言があったと報じた。だが、首相が4月5日の衆院内閣委員会で「今週頭に電話で連絡を取り、話を聞いた」「具体的な森氏の関与を確認することは何もなかった」と説明したことで、真相は解明されていない。

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首相の背中を押したのは、各種世論調査で安倍派元幹部に対し、厳しい処分を求める声が多かったことだ。例えば、3月の読売新聞世論調査(22~24日)で、岸田内閣の支持率は5カ月連続で「危険水域」といわれる2割台にとどまったが、不正還流に関係した安倍派元幹部らに対し、厳しい処分をするべきだと「思う」との回答が、自民党支持層で77%(全体で83%)に上り、前回2月調査から5ポイント上昇していた。

「独裁的な党運営には断固抗議する」

処分対象者は、反発した。塩谷氏は4日の党紀委前に提出した弁明書でこう主張した。

「スケープゴートのように清和研(安倍派)の一部のみが、確たる基準や責任追及の対象となる行為も明確に示されず、不当に重すぎる処分は納得がいかず、到底受け入れることはできない。独裁的・専制的な党運営には断固抗議する」

塩谷氏は5日には記者会見を開き、「党全体の責任と言うなら、総裁の責任はあると思う」と述べ、岸田首相が処分対象とならなかったことに怒りを露わにしたうえ、党紀委の処分を不服とする再審査の請求を検討する意向を示したが、最終的に離党は避けられまい。