安倍派の塩谷、世耕両氏に離党勧告

自民党は、派閥の政治資金規正法違反事件をめぐって、4月4日に党紀委員会を開き、安倍派元幹部の塩谷立元文部科学相、世耕弘成前参院幹事長を離党勧告などとする処分を決定した。

事前の予想よりも処分がやや重くなったのは、二階俊博元幹事長が3月25日に次期衆院選に出馬しないと表明し、自ら政治責任を取ったこと、各種世論調査で安倍派元幹部に厳しい処分を求める声が上がり、岸田文雄首相(自民党総裁)が党内の反発も限定的だと踏んだことによるのだろう。

記者団の取材に応じる岸田文雄首相=2024年4月4日、首相官邸
写真=時事通信フォト
記者団の取材に応じる岸田文雄首相=2024年4月4日、首相官邸

首相は今回の処分決定で政治責任問題に幕を引きたい考えだが、処分の有無や軽重をめぐる駆け引きを通じ、9月の総裁選に向けた党内抗争が始まっている。首相は総裁再選を目指し、4月28日投票の衆院3補選で「1勝」をもぎ取りたい考えだが、情勢は明るくなく、政権浮揚の兆しはうかがえない。

「自らの政治的責任を明らかにする」

二階氏が衆院選不出馬を表明した3月25日は、岸田首相が処分検討に向け、塩谷氏ら安倍派元幹部4氏に再聴取を開始する26日の前日というタイミングだった。

二階氏は党本部での記者会見で「派閥の政治資金問題が政治不信を招く要因となったことに、国民に深くおわび申し上げる。自らの政治的責任を明らかにするべく、岸田総裁に次期衆院選に出馬しないことを伝えた」と明らかにした。

重い決断だが、これで処分を免れるという計算も入っているだろう。結果的に誰一人自発的に責任を取ろうとしない安倍派元幹部への心理的圧力になったに違いない。

二階氏に関しては、秘書が資金管理団体の政治資金収支報告書に二階派からのパーティー収入3526万円(党内最高額)を記載しなかったとして略式起訴され、有罪が確定した。同派の元会計責任者はパーティー収入など計約2億6400万円の収入を派閥の収支報告書に記載しなかったとして在宅起訴されている。

これについて、二階氏は記者会見で「政治責任が全て監督責任者である私自身にあるのは当然だ」と述べたが、自身にかかわる政治資金問題の内容については説明を避けた。