「その歳来るんだよ。ばかやろう」

二階氏は、区割り変更に伴う次期衆院選の和歌山2区の後継候補については「地元の判断に任せる」と述べるにとどめた。

毎日放送記者から自身の年齢(85歳)も不出馬の理由に入るかと問われ、「年齢に制限があるか? お前もその歳来るんだよ」といら立ち、横を向いて「ばかやろう」と囁いた場面は、テレビ報道などで伝えられた。

二階俊博元幹事長(写真=依田奏/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

衆院当選13回、経済産業相や総務会長を歴任し、2016年8月から歴代最長の5年2カ月も幹事長を務めた実績がある政治家が、政治責任を取るとの決断に対する質問としては粗雑かつ非礼というものだろう。

岸田首相は、25日の参院予算委員会で、二階氏から不出馬の意向をその日朝に伝えられたとし、「熟慮の上の判断だろうから、重く受け止めると申し上げた」と明かした。予算委終了後には二階氏を党本部に訪ね、「党の功労者として、今後もご指導ください」などとねぎらい、長きにわたった議員生活の思い出話に耳を傾けたという。

首相にとっては、これまでの党への貢献を考えれば、二階氏の処分が最大の難題だっただけに、不出馬表明に安堵したというのが本心だろう。首相はその後、記者団に「自民党の再起を強く促す出処進退であると、重く受け止めた」と高揚気味に語っている。

「OBになってもっと自由に活動される」

実は、二階氏のような実力者なら、議席バッジを外しても、政治活動にそれほど影響が及ばない。森喜朗元首相、古賀誠元幹事長、故青木幹雄元官房長官らが議席を持たずとも、個人事務所に政治家や官僚、陳情客が訪れ、政局や政策に政治力を行使したように、二階氏も事実上、二階派を率い、国土強靭化などの政策に関与していくのだろう。

この点、二階派の事務総長を務めた武田良太元総務相は3月27日のBS日テレ番組で、二階氏について「365日政治を考えている」「卒業され、OBになってもっと自由に活動されるフィールドが広がると思う」と語っている。

二階氏は、今回の処分を免れることによって、次期衆院選まで議席を保ち、党和歌山県連会長として、衆院和歌山2区の後継者選びにも発言力を持つ可能性がある。二階氏は、参院和歌山選挙区選出で衆院への鞍替えを広言している世耕氏を警戒してきた。二階氏が三男で秘書の伸康氏を後継者にしたい思惑があるのに対し、世耕氏は二階氏が引退し、子息にバトンを渡すタイミングで衆院選に出馬する意向を示していたからだ。

今回の不出馬表明は、その時点で世耕氏に対して重い処分が予想されており、仮に次期衆院選に非公認で出馬すれば、反党行為だとして除名され、無所属で当選しても、復党まで長い道のりになることも、判断材料になったのではないか。