父親が肝硬変に。母親は特養に

2021年1月。6日に91歳の誕生日を迎えた父親は老健で具合が悪くなり、入院。全身の浮腫がひどく、検査の結果、「肝硬変」であることが判明。主治医から、「がんより悪いと思ってください」と言われる。

しかし世の中はコロナ禍。直接面会はできず、iPadごしにしか会えない。

「あの様子では長くない」と感じた犬塚さんは、帰宅して家事をしていても気持ちが乱れ、当時、立つにもトイレに行くにも手を貸さないといけない母親の存在を疎ましく思ってしまう。

「お父さんが死にそうなんだよ。お母さんしっかりして!」と言っても、もう母親は理解できていない様子。頭の怪我をして入院した後も、もう何度も転倒している。

この頃、認知症が進んだ母親は、2020年11月、なんと要介護5になっていた。一人での留守番も難しくなり、二度目の介護離職も考えた犬塚さんだったが、年齢的にも金銭的にも難しい。悩んだ末に、4月に市内にオープンするという特養を申し込んだ。

3月。91歳3カ月で父親がこの世を去った。死因は肺炎だった。

そして4月。母親は特養に入所。

それから2年後の2023年11月。90歳8カ月で母親が亡くなった。食事も水分も摂れなくなって枯れていき、それでも穏やかな最期だった。

写真=iStock.com/eugenekeebler
※写真はイメージです

介護者も被介護者も「1人で抱え込まないで」

「とにかく必死な9年間でした。1人で2人を看ていたので、片方に何かあったときお願いできる相手がいないことに不便を感じていましたね。姉は数カ月に一度くらいの割合で両親の顔を見に来ましたが、普通に遊びに来て帰って行くだけで……。どうにも耐え難い心境になった時、状況を話しても、『それは困ったね』と言うだけ。いつも最後に『何もできない娘ですいません』という決まり文句で締め括り、手伝おうという気持ちが感じられなかったので、自然とあてにしなくなりました」

介護の困りごとは、ケアマネや包括センターの職員に相談した。だが1人ではどうにもならないことは少なくなかった。

長風呂好きだった父親は、のぼせて自力で出られなくなることがあり、女性である犬塚さんの力ではどうにも浴槽から出せなくなったことが何度かあった。そんなときも、「もう1人いれば」と思ったという。

結局、実際1人ではどうにもならず、一度だけ救急車を呼んでしまったことがあったが、救急隊員は嫌な顔ひとつせず助けてくれた。

「普通に結婚でもしていれば、重い物を持ってもらえたり、車を出してもらえたり、男手があったらいろいろ助かったのかも……。なんて思うこともありました」

もともと喧嘩の多かった両親は、介護生活になっても喧嘩は絶えなかった。

「2人が喧嘩をしていて、止めに入るときなどは、怒鳴ったりすることはよくありましたね。親子なのでお互い遠慮なしで……。父が母を叩いたとき、思わず父のハゲ頭をビタンっと叩いてしまったこともありました」

どうにも腹が立ったり、やり切れないような気持ちになったりするときはブログを書くことが良い気分転換になっていたようだ。

「文章にしてみると、何となく面白く思えて消化できたというか。ブロ友さんとの交流もありましたので、共感し合える仲間がいてくれたのはありがたかったです。昔のブログを読み返し、過去の自分に励まされるようなこともありました」

幸い両親には貯金があり、2人の葬儀を出してお墓を立て、実家の補修にあてても、まだ姉妹で分け合えるほどの額が残った。

「改めて介護生活を振り返ると、デイやショート、介護ヘルパーなど、あらゆるサービスを利用しておいたほうがいいと思います。いろいろなところとつながっておくことで、自分や家族の非常事態の時などにどこかしらが助けてくれますし、介護者の安心や心の余裕になると思うのです。被介護者も、デイやショートに早い段階から慣れていれば、心の負担が少なく済む気がします。そういった意味で、よく聞く『1人で抱え込まないで』というアドバイスは、介護者のための言葉のようでいて、被介護者のためでもあるように感じます」

介護のプロとはいえ、家の中に他人が出入りすることに抵抗を感じる人は少なくない。そういう意味で介護者も被介護者も、人の手を借りることに早くから慣れておくほうがお互いにいい。

「今の私の目標は、75歳くらいまでは、元気に何らかの仕事をすることです。最近は、親に対する感謝の気持ちが自然に湧いてくることが多く、そんな時『介護をしたことが、育ててもらったことへの、少しばかりの恩返しにはなったかもしれないな』と思ったりしています」

現在犬塚さんは、好きなように使える時間を存分に楽しんでいる。

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