「口座開設すらしていない」富裕層の実態

日米で株価が最高値を更新し、NISAや資産運用で盛り上がるものの、上述したように、クレジットカード積立の上限額変更、売却後の再投資に制約があること、損益通算も繰越控除もできないことなど、いろいろと制約や条件がありそうだ。

このため、既に特定口座などで個別株を売買している人からは、「わざわざNISA口座を別枠で作るのは、面倒くさい」「手続きが分かりにくく、途中でやめた」との声も相変わらず聞かれる。

富裕層にとっても、「投資枠が小さくてメリットがない」との声も多く、「ややこしいことが目に見えているので、口座開設すらしていない」(外資系ファンドマネージャー)と、意外にも金融のプロでもNISAをやっていない人は多かったりする。

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もっとも、NISAは富裕層や金融のプロのためというより、投資家のすそ野を広げるため、少額投資家のための制度なので、と諫める声もある。

NISAなら損するリスクが減るわけではない

いずれにせよ、忘れてはいけないのは、NISAによる投資においても、損失リスクがあるということだ。

もれなく貰えるポイントやキャッシュバックにつられてはいけない。当たり前だが、NISA口座を開設すれば、誰もがお得で自動的に儲かる話ではないのだ。

そもそも金融マーケットはトレンドも含め将来予測は困難であるケースがほとんどである。よって、「必ず儲かります、値上がりします」といった誘い文句はありえない。それはNISA口座による投資においても同じだ。

金利リスク、クレジットリスク、為替リスク、流動性リスク、地政学リスク……マーケットには多様なリスクが存在する。リスクとリターンはトレードオフ(表裏一体)の関係であり、リスクを抑えてリターンを享受するのは、理想ではあるが虚構ともいえる。

ローリスク・ハイリターンとか、ローリスク・ミドルリターンといった「おいしい金融商品」は幻だ。リスクテイクをある程度認めてリターンを得る、ということになろう。

NISAのメリットは、当該商品を売却した際の売却益が非課税になることであり、当たり前ではあるが、NISA口座で投資すれば、マーケットリスクが軽減される訳でもなく、当該商品に補塡ほてんが付与される訳でもない。