“支出のブラックボックス”は小遣い増額で解決
さて、上山家の家計はどう改善すべきか。私は3カ月の家計見直しプログラムを開始するにあたり、次の2点をお願いしました。
①これまで通り、買い物はいったんカードで決済する。②ただし、自分の意志で使った支出であることが分かるようにしておくこと。
そして3カ月後。タケルさんは、記録を見て愕然としていました。「自分の意志で使ったお金はこれほどあったのか」と。今まではし沸は自動的に家計簿に計上、把握していたけど、内容を振り返るまではしていなかったのです。この事実を認識できただけでも、大きな一歩です。
次に、枠組みを整えてもらいました。まずは通信費をキャリアから格安スマホに見直すこと。つい余計なものを買ってしまうという日用品はよく行くドラッグストアのプリペイドカードに1万円だけチャージして、1万円以上使えないよう予算管理をすること。
さらに、タケルさんの小遣いを2万円増額。それまでタケルさんがラクだからと自分都合で車で仕事に行く際に使っていた駐車場代、勝手にカード決済して買っていたお菓子やアイス、娯楽費を、お小遣いの中で自由に使ってもらうことにしたのです。ただし、カード決済は禁止。
小遣いが増えると家計も膨らむように見えますが、実際は他の費目の支出が減りました。これまでいかに「小遣い」を他の費目に振り分けていたかが分かりますね。
トータルで見ると、支出は3万1000円下がっていて、3万5000円の黒字だった家計が、6万3000円の黒字にUP。青天井だったブラックボックスを小遣い枠に移動し、その枠に収めることで、黒字に転化できたのです。
夫婦仲改善という副次効果も
このご家庭は、3年未満に住宅を購入する予定も二人のお子さんが中学受験をする予定もなく、近々大きな支出予定はありません。貯金は、まだ生活防衛費となる手取り世帯月収7.5カ月分(350万円程度)まで到達していないのですが、毎月黒字になっていること、ボーナスが手取りで年160万円あることから、ボーナス分を貯蓄に回し、黒字部分の6万3000円を半分ずつ、NISAで積み立てていくことにしました
上山さん夫婦のケースでは、夫のブラックボックスがクリアになったことが分かりやすい勝因でしたが、その裏で、お金の使い方に対する夫婦の気持ちを擦り合わせていけたことは、大きかった。
夫婦といえど、お金の使い方は違うのが当然。どちらが正しいとか、どちらに合わせることを強制するのではなく、妥協ではないですが、やはり足並みを揃えて協力していかないと資産は増えていきません。逆に言えば、経済的に余力がある家庭であれば、足並みさえ揃えば、お互い気持ちよく家計を共有でき、貯めていけます。すると、自然とご夫婦の仲もよくなります。こうしたケースは決して珍しくないんですよ。