家計簿アプリの意外な落とし穴
話を聞き進めていくと、いくつか問題点が見えてきました。
1つ目は、ブラックボックスの存在。原則、カード決済している夫婦ですが、カード支払い不可の店では現金で払っており、その際は自己申告で家計支出として精算します。ただし、タケルさんの場合、レシートがあったりなかったりする。つまり、タケルさんの嗜好品のタバコなど、明細を見られたくないものは、現金払いにして支出品目名はうやむやにして精算できる“抜け道”があったのです。
また、家族カードで決済していても、“抜け道”はありました。もともと上山家には、個人的な趣味や嗜好品は各自3万円ずつの「小遣い」から支払うルールですが、タケルさんは本来「小遣い」で払うものを「家のお金だ」と言い張ることも多かった。それがミチコさんにとって悩みの種になっていたのです。
例えば、タケルさんは漫画や本を「小遣い」ではなく、家計費の中の「娯楽費」から出していました。ミチコさんが明細を見て「この“書籍代”は何? 漫画は自分の趣味だから小遣いで払うべきだよね?」と問うと、「どうせ家に置いておく漫画は家族全員が読むんだから、家のお金でしょ」と主張。
他にも、タケルさんが「食費」として買った、主に自分が好きで食べているスナック菓子も「リビングで食べていれば、子どもたちも一緒に食べるでしょ」。「被服費」に入っていたタケルさんの美容院のカット代に至っては、「身だしなみは収入に直結するから、どう考えたって経費でしょ。俺、営業マンだし」など、挙げればきりがありません。
確かにそうかもしれないけれど、なんでもかんでも家族カードで決済するのはいかがなものか。少なくとも漫画、お菓子、ヘアカットは小遣いに該当するのではないか。――ミチコさんがそう反論しても、タケルさんは自分の考えは正しいと思い込んでいるからか、聞く耳持たず。挙げ句には、「収入を共有している以上、(個人的な)支出も共有して当然だ」と、理解に苦しむ持論を展開。まるで、「俺の金(小遣い)は俺の金、家族の金も俺の金」のような身勝手な話です。
話し合いをしようとしても平行線で、業を煮やしたミチコさんが、客観的アドバイスを求めに我々のところに来たわけです。
私はここで、3つめの問題に気づきました。夫婦間で話がかみ合わず、意見の擦り合わせができていないことです。これが上山家の家計の最大の問題点ではないでしょうか。