子どもの虐待死、一番多いのは「0歳0カ月0日」
2021年度、日本国内で虐待により死亡した子どもは74人。そのうち心中により死亡した子どもは24人でした。
心中以外による虐待死をした50人の子どものうち、亡くなった年齢で最多だったのは0歳児の24人(48%)。子どもの虐待死のケースでは、0歳児の中でも、とりわけ生まれたその日(日齢0日)に亡くなる子どもの割合が多いことがわかっています。
厚生労働省が2007年から2021年までの15年間の子どもの虐待死を調べたところ、亡くなった747人のうち、28.6%に当たる214人が0歳児で、そのうち過半数の127人が日齢0日で亡くなっていました。
日齢0日児の虐待死が多いことは、さまざまな困難を抱えた出産が虐待死につながっていることを示唆しています。社会の中には、10代での若年妊娠や、思いがけない妊娠、性被害の結果身ごもってしまったケースなど、妊娠したことを誰にも相談できないでいる妊婦が少なくありません。
誰にも打ち明けられないまま妊娠が進行してしまうと、病院で必要な検査を受けず、行政などの支援も得られぬまま、孤立出産にいたります。そうしたケースが赤ちゃんの虐待死につながることが、ままあるのです。
厚労省の調査によると、過去20年間で虐待死した日齢0日児176人のうち医療機関で生まれたケースは1つもありません。母親たちは自宅のトイレや風呂場などで、たった1人で出産(孤立出産)をしていたのです。「孤立出産」や「日齢0日児の虐待死」の背景には、私たちの社会が抱えるさまざまな課題があります。性教育が不十分であることや緊急避妊薬(アフターピル)を手に入れるのが困難なこと、人工妊娠中絶の経済的なハードルが高いこと、経口避妊薬も含めて人工妊娠中絶の際に配偶者の同意が求められるために女性が自分ひとりで決められないといった制度上の問題があります。
妊娠や中絶に対する社会の強いタブー意識や自己責任論もまた、妊婦が助けを求める声を上げづらくしています。
また、思いがけない妊娠などで生みの親が子どもを育てられない場合、生まれた子どもを養親が引き取る「特別養子縁組」という仕組みの周知も課題です。特別養子縁組は家庭に恵まれなかった子どもの命を救い、温かい家庭の中で健やかに育つ環境を用意するために1988年にスタートした制度です。
制度ができてからすでに35年以上が経ちましたが、いまも救われない子どもの命があります。少子化が国難となっている日本は、「産めよ殖やせよ」といわんばかりに出生数を増やすことにやっきになっています。
しかし、実際に生まれた子どもたちは、幸せに生きることができているでしょうか? 今も生まれて間もなく消えていく命があります。すべての命が安全に、健やかに育つことができるようサポートするのは、社会の責任です。