「何のために話をしているのか」を最初に把握する
最初のかけ違いをクリアしたところで、次に「伝え方」を考えましょう。
まず、お互いにしてほしいのは、「何のために話をしているのか」を合意することです。
相手に何かの判断をしてほしいから話しているのか、ただ感想を聞きたいから話しているのか――。そんな話の目的を最初に把握しておくことが大切です。
さもなければ、相手は「いま何のために話しているんだっけ?」「それわたしに聞いてどうするの?」という反応になってしまいます。これはお互いに時間の無駄にしかならず、僕はこの状態を、会話における“いちばんの悲劇”と見ています。
でも、これって実によくある話ですよね? 特に会議などのビジネスシーンでよく起こる状況です。いったい何のために集まっているのかがよくわからず、アジェンダが共有されていない状態で突然会議がはじまってしまう……。要するに、「会議をすること」が目的になってしまっているわけです。
いまは「働き方改革」が叫ばれ、ビジネスパーソンはより生産性を上げることが求められていますが、生産性が低くなる根本原因の多くは、この「何のために話をしているのか」「何のために集まっているのか」があいまいになっているからではないかと、僕は捉えています。
もっと言うと、「何のために仕事をしているのかわからない」状態で仕事をしている人が、実はとても多いということです。
「話し方」のメソッドにおける見落としがちなポイント
いま話しているのは、相談なのか、判断を求めているのか、雑談なのかが自分でもよくわからない。その根本の目的を把握していない状態で、ただ惰性で会話をしているから、「何のために話しているのだっけ?」となってしまう。
このような状態では、いくら「話し方」を磨いても伝わるわけがありません。
世の中には、実にさまざまな話し方のメソッドが存在します。「話す順番は結論から」などともよく言われますよね? でも、聞き手が黙って聞くことが前提のプレゼンテーションならともかく、「この話し方なら絶対にうまくいく!」というメソッドはないと考えたほうがいいでしょう。
なぜなら、それらのメソッドの多くは話し手側の論理で完結していて、聞き手側のことをあまり想定していない場合が多いから。これがいわゆる、「話し方」のメソッドにおける見落としがちなポイントになると思います。
同じ業界で働く同じ文脈を共有しているビジネスパーソン同士と、そうでない人とでは、同じ内容でも伝え方はかなり変わるはずです。考えてみれば当然のことですが、前提となる知識や条件がまったく違うからです。
誰にでも普遍的に通じるような「話し方」のメソッドに頼りすぎるのではなく、あくまで個別具体的に、目の前の相手と「話をする目的」を明確にすることからはじめてみてください。