頭が良い人ほど幸せというわけではない

それでは「頭の良さ」と幸せは、どのように関係しているのでしょうか。頭が良いとさまざまな面でメリットが多いため、幸福度も高いのかなと思いきや、意外にも「頭が良い人ほど幸福度が高い」という結果は得られていません。

エラスムス大学ロッテルダム校のルート・フェーンホーフェン教授らが23の研究を精査したところ、多くの研究で「IQが高ければ幸福度も高くなる」という関係は確認できませんでした(*3)。研究ではIQが高くとも幸福度に変化は見られないか、むしろいくつかの研究では、幸福度が低下する傾向が確認されたのです。

例えば、インスブルック大学心理学部のイーディス・ポレット氏らの研究では、高い知能を持つ人ほど、人生においての生きがいを感じづらかったり、幸福度が低くなる傾向があると指摘されています(*4)

これらの研究が示すように、頭が良ければ幸福度も高いという傾向は必ずしも確認できていません。頭の良さにはさまざまなメリットがあるのに、なぜこのような結果になるのでしょうか。

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頭の良さと幸福度に関する3つの仮説

頭が良い人ほど必ずしも幸福度が高くならないという原因に関して、これまで3つの仮説が提示されてきました。

1つ目の仮説は、頭の良い人ほど仕事や生活面でより野心的になり、さらなる高みを目指すため、現状になかなか満足できないというものです。上昇志向が強くなり、現状にむしろ不満が溜まってしまうのは、ありうる話だと思います。

2つ目の仮説は、高い知性を持つ人ほど、自分の内面世界に興味関心が強くなり、現実世界の人との関係が希薄になるため、孤独感を深めてしまうというものです。孤独は幸福度を押し下げる大きな原因となります。

3つ目の仮説は、高い知性を持つ人ほど、私たち人間社会の不完全性に気が付いてしまい、不安や不満を持ちやすくなり、幸福度が低下してしまうというものです。

これら3つの仮説は確かに「そうかも」と思うところはありますが、実は今年発表された最新の研究で、頭が良い人ほど必ずしも幸福度が高くならない原因について、さらに解明が進んでいます。