実はこの背後には別の事情がある。1990年代初頭までは大手企業では数の採用、「2・6・2採用」という図式が成り立っていたという。綿井氏はいう。

「バブル経済のころまでは企業は、かなりおおらかな採用をしていて、幹部となって企業を牽引していく全体のトップ2割、平均的な社員6割、最後の2割は労務調整要員という図式が成り立っていました。しかしそれ以降企業の採用マインドは厳しくなり質を重視し、労務調整要員はとらなくなった。採用目標人数を達成しなくても、一定のレベルに達していない人材を無理に採用しようとはしなくなった。と同時に日本人であろうと外国人であろうと優秀な人材をとる傾向になっている」

事実ある大手商社で次のような問題があった。社長が新卒社員を集めて会食をした際の話だ。

「新卒社員たちに『外国に行ってどのような活躍をしたいか』と社長が聞いたのです。ところが新卒社員からは『海外に行きたくない』という答えが返ってきたようです」(人事に詳しいコンサルタント)

商社の社員ですらこうした状況だ。まして他の企業に入社した新卒社員たちの海外への転勤などに対するアレルギーはさらに強いものがあるようだ。

産業能率大学の調査では海外勤務を望まない新入社員は2人に1人いるという。同大学では次のように説明している。

「2010年の新入社員の2人に1人は海外で『働きたいとは思わない』とアンケートで答えている。理由を見ると『リスクが高い』『能力に自信がない』が5割近くあった。不安が強く意識が内向きになっている傾向が顕著に出ている。ほかの調査なども加味して考えると、ここでいう能力とは英語力の欠如という点が大きいのではないか」