選手が勝ち取った権利
一定期間チームでプレーした選手が、他球団と自由に交渉してチームを移籍することができるFA制度は、MLBでは1977年から始まった。そして日本でも1993年から導入されたが、その仕組みはMLBとは似て非なるものだった。
そもそもFA(フリーエージェント)という概念はドラフト制度を補完するものとして生まれた。
プロ野球リーグでは、球団がアマチュアのプロ志望選手を選択するドラフト制度が導入されている。選手は指名された球団に入るか入らないかを選択するだけで、意中の球団に自由に入団することはできない。
アメリカでは「これは反トラスト法(日本の独禁法に相当する)に抵触する」として、訴訟が起こされたが、裁判所は、MLBのドラフト制度は「反トラスト法」の対象にならないという結論を出し、ドラフト制度を支持した。
MLBは、例えばJリーグとは異なり、チームの入れ替えがなく固定された「クローズドリーグ」だ。このリーグで、自由に選手獲得ができるとなると、資金力のあるチームに有力選手が集中し、強者弱者が固定してしまう。リーグの健全な運営のためには戦力均衡が必要で、ドラフト制度はそのための方策として認められる、という理屈だ。
しかしそうなると選手は、永続的に球団に支配されて移籍の自由がないことになる。それは不当だと一部の選手が異議申し立てを行い、ストライキなどの抗議活動を経て、1977年、選手が一定年限チームに所属するとFA権を取得して他球団と自由に交渉して移籍できることになった。
日本とメジャーリーグでのFA制度の違い
ただ、選手が移籍することは、その選手が所属していたチームにとっては戦力の損失になる。これを補償するために、移籍先のチームは移籍元のチームに移籍金を支払う。また大物選手のFA移籍に際しては「ドラフト上位の指名権」も譲渡することとなった。
日本でも1993年からFA制度が導入されたが、それは最初からアメリカとは似て非なるものだった。
MLBではアクティブ・ロースター(負傷者リストなど各種出場停止リスト登録中期間も含む)に登録されていた日数が6.000(通算6年)に達すると、対象の選手は自動的にFA状態になる。
毎年、シーズンオフになるとMLBでは、多くの選手が球団を離れる。残るのはFA年限前の若手選手と、複数年契約をしている大物選手だけだ。それ以外の選手は全員FAとなって、改めて球団と契約交渉をしなければならないのだ。
NPBの場合、国内FA権を取得するためには、145日以上の1軍登録が8シーズンに到達することが条件となっている。しかし、FA権を取得できるようになっても、選手自身がFA権の行使を宣言しない限りは、選手の保有権は在籍している球団に残る。
実質的にFA権を行使して大型契約を結んで球団を移籍するのは、一部の大物選手、スター選手だけになっている。