西武からソフトバンクにFAで移った山川穂高選手(32)の人的補償として、両球団は1月11日、甲斐野央選手(27)が西武に移籍すると発表した。だが、同日付の日刊スポーツが「西武は和田毅投手を指名する方針を固めた」と報道していたため、ファンの間には波紋が広がった。一連の「騒動」の背景にはなにがあったのか。ライターの広尾晃さんが解説する――。
FA制度の欠陥が露呈した西武―ソフトバンクの騒動
諸事多難な幕開けとなった2024年だが、プロ野球も仕事始め早々、山川穂高のFA移籍にまつわる問題が、物議をかもしている。
2022年オフ、知人女性へ性的暴行をした疑いで、埼玉西武ライオンズ(当時)の山川穂高は今年5月23日に警視庁麻布署によって書類送検されていた。東京地検から嫌疑不十分で不起訴処分とされ、球団によって無期限の謹慎処分になっていた。
しかし2023年オフに「FA(フリーエージェント)権を有する」ことが確認され、12月に福岡ソフトバンクホークスにFA移籍、入団会見はあたかも謝罪会見のようになった。
高額年俸を得ていた山川の移籍に際してライオンズはホークスに対して「人的補償」を求める権利があった。1月11日、それが現役2番目の年長投手で、通算158勝のチームのレジェンド、和田毅であると日刊スポーツによって報じられると、ホークスや王貞治球団会長への批判の声が高まった。
日刊スポーツによると、その後、ライオンズは「和田を指名する方針を固めていた」が、「反響の大きさなどを鑑み、両球団が話し合って急きょ方針を転換」し、再度の協議の結果、救援投手の甲斐野央を指名したという。
この騒動によって、和田毅は、戦力として確保しておきたいと球団が考える「プロテクトリスト」から外れていることが明るみに出た。和田毅にとっては心穏やかならぬことではあろう。
今回に限らず、日本プロ野球のFA制度には問題があり、筆者はFA制度を見直す時が来ていると考えている。まずはFA制度ができた経緯からみていきたい。