劣化した擁壁、排水を垂れ流すケースも

擁壁そのものの劣化もある。

1970年代初頭に開発された千葉県八街市榎戸の住宅団地では、以前から団地内の複数の宅地の擁壁にクラック(ひび割れ)が発生しており、中には一部崩落している擁壁もある。

だが、本記事執筆のために再訪したところ、1戸の新築工事が行われていた。比較的市街地に近い割に近隣より相場価格が安めなのだが、近隣の複数の区画が宅地として利用不能な状況になっている中、なおも住宅地としての利用が続く状況に不安を覚えてしまう。

排水に問題を抱えた分譲地も多く目にする。

そもそも、地盤沈下などによって路肩の側溝そのものが損壊していたり、土砂に埋もれてしまって使用不能になっているところも多い。それ以前の問題として、周囲が山林や農地などで、他の住宅密集地から隔絶されているような分譲地の場合、側溝はあっても、分譲地外のどこにもつながっておらず、事実上の垂れ流しになっているケースがある。

見たことがない方にとってはにわかに信じがたい話かもしれないが、分譲地の隅で側溝そのものが途切れている光景は全く珍しいものではない。

筆者撮影
造成から半世紀が経過し、擁壁が壊れ始めている宅地。(千葉県八街市榎戸)
筆者撮影
分譲地の外で側溝が途切れており、そのまま垂れ流しになっている。(千葉県成田市多良貝)

仮にこれらの分譲地に(今はほとんど行われないが)新築工事を行う場合は、現在は合併浄化槽を設置する必要があるが、古い住宅の中にはいまだ生活排水をそのまま垂れ流しているところもある。

しかしこれもまた、地盤沈下を起こした宅地や、擁壁が崩落・劣化した宅地の分譲地と同様、現在の法令や基準を満たしていない中古住宅の利用が規制されているわけではない。