そして、いよいよ誰も欲しがらなくなるほど朽ち果てた段階になって初めて、ようやく重い腰を上げたという話も珍しくないが、そこまでにならないと決断しない心理の背景にあるものが、高度成長期やバブル期に醸成された「土地神話」が生み出した、不動産に対する絶対的な信頼感であるとすれば、もはやその認識のギャップは埋めがたいものになっていると言わざるを得ないだろう。
決断遅れがトラブルを招く
空き家を放置して雑草や雑木が繁茂し、野生動物が棲みついたりすれば、近隣住民からのクレームが入り、地元自治体から指導が入るようになる。それに対応すれば費用もかかるし、その面倒を避けて放置しても、建物は朽ち果てていく一方だ。
建物の価値が下がれば下がるほど、売却の手段は限られていく。価格がつかないほど荒れ果ててしまったら、単に手放すためだけのために、高額の出費を負担せざるを得なくなる。そうした所有者の焦りにつけ込むような業者もいるし、あらゆる面でリスクは高まるばかりだ。
決断を先送りにした、というだけで無用な問題を抱え込む人は決して少なくない。不要な不動産を所有し続けるリスクに、もう少し慎重であるべきだろう。