本番でメンタルを整えるために導入

No.1ポーズとは、自分の一番いい状態を思い出すための引き金となるものです。

ということは、必ずしも人差し指を突き出したポーズである必要はありません。

私と一番密にコミュニケーションをとっていた3年生の庭田芽青めいせいメンタルチーフは、あるインタビューで「自分がどのようなプレーをしているかや、決勝の舞台などをイメージし、本番で平常心を保てるようにメンタルを整える時間を提案した」と語っていました。

その中で生まれたのが3本指のポーズだったのです。

まるでフレミングの法則のような指の形ですが、これはかつて在籍していた学生コーチが数字の3を示す時に、普通とは違った指の形をするのが面白く、気がつけば部内で浸透していたものだといいます。

このチームで取り組んだことの中で、勢いに乗りたい時やピンチの時に落ち着きをもたらす「No.1ポーズ」の導入はとても重要なものだと考えていました。そしてチームで浸透していたこの3本指を広げるポーズが採用されたのです。

「調子がいい」と脳に覚えさせている

ヒットを打った塁上でこのポーズを行う塾高の選手の映像が、テレビで繰り返し流れていましたから、「あのポーズは一体どんな意味があるのか」とずいぶん話題になりました。

このポーズをいつ、どこで行うか、という決まり事は何ひとつありません。

ヒットを打って出塁した時、守備のタイムを取って内野陣が集まった時、選手たちが出したいタイミングで、いつでも自由にポーズをしています。

大事なのは、とてもいいパフォーマンスができた時など、ポジティブな精神状態の時にこのポーズを繰り返すことです。

このポーズを繰り返す目的は、3点ポーズをしている時は、調子がいいと脳に覚えさせることにあります。

つらい時、苦しい時に、無意識にこのポーズが出るようになればしめたもの。

吉岡眞司『慶應メンタル 「最高の自分」が成長し続ける脳内革命』(ワニブックス)

試合でピンチの場面でこのポーズをすることで、脳が勝手に前向きな精神状態を作り出してくれるからです。

同時に、自分たちがどんな目標や目的のもとにつらい練習をしているのか、自分たちの原点を思い出させる効果もあります。

キャプテンの大村君はインタビューで「No.1ポーズは自分たちを勢いづけてくれる、そして自分たちのエンジョイベースボールを象徴するようなポーズだと思います」と答えていました。

彼らの野球が頂点に輝くために、No.1ポーズは欠かせないものだったのです。

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