物価が高くても月50万円の貯金ができる

「ちょうと9月は派遣スタッフの人数が少なかったこともあって、1週間先までシフトが埋まってしまう、なんてこともありました。また、その後は急に連絡が来ることもありました。当日の朝4時に連絡があって、朝6時から来られないか、とか。仕事を断ったら申し訳ない、という気持ちもあって、手当たり次第に引き受けるようになりました」

これは他の仕事もそうだが、オーストラリアでは休日や夜間に働くと、時給が割増しになる。だが、日本で看護師をしていた感覚でいえば、休日や夜間に働くことは、なんてことはなかった。

「というか、英語を学びに来ているので、意味のない時間を作りたくなかったんです。働きに出ることで、英語を話す機会を獲得することができるんですよね。家で何もせずにのんびり過ごすよりも、どんどん働きに行って英語も使うのが自分にはいいな、と思って、それで目一杯働くようになったんです」

そうは言っても、無理をしていたわけではない。そもそもの時給が日本円で4000円超だった。これに、夜勤や休日勤務は割増しがつく。しかも、仕事は日本の看護師ほどハードでもない。物価の高いシドニーでも毎月40万円、50万円と貯金ができるようになった。

筆者撮影
スーパーに並ぶリンゴ。1kgで4.9豪ドルで500円ほどとリーズナブル

夢は訪問介護ステーションを自分で作ること

そしてお金ができたことで、もっといろんなことができるのではないか、と思えるようになったと語る。

「NHKの取材で話した『訪問看護ステーションを自分で作ってみたい』というのも、そうです。どこかに属するのではなく、自分で建てていく、なんて夢は日本では持てなかったと思いました」

目指すは、残業がない、休みが取りやすい、といったオーストラリアの働きやすさを取り入れた訪問看護施設だ。

2022年11月、藤田さんが出演した日本テレビの『真相報道 バンキシャ!』は、バイト先の同僚の知り合いからの依頼だった。

「オーストラリアのワーホリ事情を取材したいから、という話があって、もしよかったら気軽にインタビューを受けてくれないか、と。電話でコメントするくらいのものだと思っていたら、怒濤どとうの取材で1日密着とかになって。驚きました」

番組はYouTubeにもアップされ、一気にネットで拡散。これが大きくバズって大きな話題になった。その後、NHKの出演の話が来た。

「一度、しゃべっていますから、もういいんじゃないかと思っていたんですが、聞きたいということでしたので。でも、私と同じような稼ぎの人はたくさんいたんですよ。稼いだお金を使って旅行にバンバン行っていた人もいたし。それこそ、私以上に稼いでいる人もいました」