基本パターンは公的年金受け取りまでの“つなぎ”
iDeCoは、老後の生活に必要なタイミングに受け取るのがベストです。なんといっても、そのために準備してきた資金です。その上で、できればコストを抑えた方法で受け取ることを検討してください。
基本パターンとして考えられるのは、第1回で「人生100年時代」のパターンとして紹介したように、引退して働いて得られる収入がなくなった後、公的年金を受け取るまでの生活費を賄うための資金として受け取るという方法です。公的年金は受け取り開始の時期を原則の65歳ではなく、それ以降に繰り下げることで増額できます。その増えた金額が死ぬまで支給されます。
人生100年時代、何歳まで生きるか分かりませんから、公的年金が手厚くなることは長生きリスクを低減する絶大な効果があります。ただ、そのためには65歳以降に繰り下げしている間の生活費を、自分で用意した資産の取り崩しなどで賄う必要があります。iDeCoはまさしく、この繰り下げ期間中の生活費の一部を賄うお金として、年金で受け取るのが基本だと思います。
工夫次第で受け取り時の課税額は減らせる
例えば、会社員が40歳でiDeCoに加入し、65歳まで25年間加入、毎月2万3000円を積み立てて年率4%で運用ができたとすると、65歳時点での資産残高は約1182万円となります。これを65歳から70歳までの5年で受け取ると年額約236万4000円、月額にすると約19万7000円になります。一方で、65歳以上の高齢者無職世帯の消費支出は、総務省の家計調査によると2022年度は夫婦世帯で約23万7000円、単身世帯で約14万3000円です。夫婦世帯では他の資産からも少し資金手当てする必要がありますが、iDeCoの年金を受け取りながら、公的年金を5年間繰り下げることが十分に視野に入ることはお分かりいただけると思います。
5年間繰り下げできれば、公的年金は65歳時点でもらうはずだった金額の1.42倍(額面ベース)となります。またiDeCo以外に年金受け取りがなければ、雑所得の課税対象になるのはiDeCoの受取年額236万4000円のうち、公的年金等控除を差し引いた126万4000円で済みます。公的年金と受け取りタイミングをずらすことで、課税額を減らせるのがポイントです。
さらに、iDeCoとして使える退職所得控除があれば、その枠内の金額は一時金で受け取り、残りを年金として組み合わせて受け取る方法にすると、年金として受け取る金額が減るので、課税される額をさらに少なくできます。