副反応追跡調査の結果わかった安全性

一方、「子宮頸がんワクチンの積極的な勧奨の差し控えとその再開」について、まだ記憶に新しく、漠然とした不安を感じていたままの人もいるかもしれません。

HPVワクチンは、2013年4月1日に定期接種となった当時「子宮頚がんワクチン」と呼ばれていました。子宮頸がんワクチン接種後に長く続く痛みや運動障害などが報告され、6月14日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会で、ワクチンの副反応の発生頻度や適切な情報提供が国民にできるようになるまで積極的にお知らせをして「受けましょう」と勧めることを差し控えることに決まりました。

しかし、その後の副反応追跡調査の結果は以下のようなものでした。

・副反応疑いの報告は、0.03%であった

・発症日や転帰がわかった人のうち、回復したのは89.1%

・未回復の人の症状は、多い順に頭痛、倦怠感、関節痛、接種部位以外の疼痛、筋肉痛、筋力低下

・同ワクチンの接種がない人にも同様の症状の人が同じくらいの頻度でいる、つまり子宮頸がんワクチンでその頻度は増えない

その結果、2022年4月から自治体から予診票などを送るHPVワクチンの積極的推奨が再開されました。

写真=iStock.com/ELENA BESSONOVA
※写真はイメージです

キャッチアップ接種も行われている

この間も日本以外の国ではHPVワクチンの接種率がこれほど下がらず、大勢の人が受けていましたし、現在でも行われています。そもそも2015年と2017年には、WHO(世界保健機構)が「HPVワクチンの安全性は優れている」との声明を発表しました。2018年には、国際的な非営利学術組織であるコクランが「HPVワクチンは子宮頚部前癌病変を予防し、重篤な有害事象を起こすリスクは増えない」と評価しました。それでも様子を見ていた日本政府、厚生労働省の対応は非常に遅かったのです。

そのため、WHOは「リスクは仮に存在したとしても小さく、長期間続くがん予防の利益を考慮すべき」として、日本を名指しして非難しました。厚生労働省はHPVワクチンの定期接種を中止はしなかったものの、実際の窓口である保健所に接種希望者が予診票を取りに行くと「国がすすめていないのにお子さんに受けさせるのですか?」と翻意させようとしたケースもあったようです。そういった経緯があるため、積極的勧奨の再開以降も接種率は期待されたほど戻っておらず、いまだ16%程度です。

ご自身やお子さんが接種対象者であったことを知らないまま、定期接種として無償でワクチンを受けられる期間を過ぎてしまった人もいます。2022年4月〜2025年3月までの3年間、キャッチアップ接種が行われています。平成9年度〜平成17年度に生まれた女性が対象で、接種のための書類が送付されていない人は、ぜひ保健所に問い合わせてみてくださいね。

(構成=小泉なつみ)
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