自分への投資はもっとも利回りがいい

お金持ちがもうひとつ惜しみなくお金を使う領域がある。それは、“体験”である。

お金持ちになる多くの人は、刺激的な体験、面白い人との出会い、新しい考え方を得るためなら、お金を惜しまない。

彼らは、それらの体験によって自らの視野が広がり、それが自らをより働かせることを知っている。“自分に投資する”ことが、最も利回りが良いことを知っているのだ。

「贅沢はしてもいい、見栄は張るな。これは、代々受け継がれた教え」

これは何代も続く名家に生まれ、生まれながらにして超富裕層の知人の言葉だ。

彼は現在大企業の経営者であるが、贅沢なお金の使い方はするが、派手な使い方は一切せず、お金を使うとしたら社員に還元すると言い、実際にそうしている。彼が個人で購入する洋服はいつも超高級品で、イタリアで行われるそのブランドのパーティに日本人で唯一招待されるほどのVIPでもある。しかし、そのことを自分の口から言うことはまずあり得ない。私は、このことをその洋服店の店員さんからこっそり教えてもらった。彼は、言う。

「贅沢で潰れる会社はない。何が良いものかを知るためには、贅沢はしなければいけない。潰れる時は、“見栄”で潰れる。絶対に、見栄のためにお金を使ってはいけない」

“お金持ち”というものを生まれながらに背負い、そして教えを受けてきた者の言葉には、より一層の深みを感じる。

「贅沢」と「見栄」の違い

ある日、別の超富裕層の方と一緒に銀座の高級クラブに飲みに行った。この時一緒にいたもうひとりの方が、高級なシャンパンを飲もうと提案をした。その時、すかさず超富裕層の彼は言った。

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「この飲み代はみんなで割り勘だけど、そのシャンパン、お前の奢りなら飲んでもいいぞ。お前の見栄は、お前だけで張ってくれ」

一点の嘘もない、紛れもない正論である。彼にとって、高級シャンパンが一本開いたところで、痛くも痒くもない料金だ。

しかし、彼には明確なルールがある。ただ、銀座の高級クラブで堂々と切り出すことはかなり難しい。豪快に笑いながら、何の躊躇もなく言ってのける彼の凄さを目の当たりにし、私は超富裕層がいかにして成り上がるかの一端を見た気がした。

真のお金持ちは、一時的に自分の欲求を満たす消費や、見栄や優越感のためのお金は使わない。お金から解放されるために、お金そのものを増やしにかかる。そして、お金がお金を生み出して溢れた分で、贅沢を思う存分楽しむ。

お金持ちと“思われる”べく、一時的な感情に支配され、大量消費者となってしまっては、お金持ちにはなれない。

誰しもがお金持ちになろうとは思っていないかもしれないが、人生でお金の問題から解放されることを想像してみてほしい。綺麗事ではなく、ほとんどの問題は解決するはずだ。「金持ち喧嘩せず」とは、真実を捉えた言葉である。