恋愛・結婚に明確な社会経済的格差

では、この増えた「未婚者」とはいったどのような人たちなのであろうか。前述した出生動向基本調査のデータを分析すると、異性との配偶・交際関係に関して1)既婚、2)未婚・交際相手あり(事実婚・同棲含む)、3)交際相手なしだが異性との交際に興味あり、4)交際相手なくまた異性との交際にも興味なし、の4つに分類すると、1)既婚者の割合が大幅に減った分はそのまま、3)および4)の「交際相手なし」の割合につながっているのである。

巷では、現在の婚姻制度に魅力を感じず事実婚など新しい形のパートナーシップを望む人が増えた(だから少子化が進んだ)という意見も見られるが、実際には、2)未婚で交際ありの人の割合はほぼ不変である、つまり事実婚などの割合は過去数十年でほとんど変化していない。

さらに衝撃的なのは、このような恋愛・結婚に明確な社会経済的格差が見て取れることである。

例えば、男性で4)交際相手なく異性との交際にも興味がないと答えた人の内訳で見ると、年収100万未満が48.2%、年収100万~299万が28.2%と実に年収300万未満で75%を占めているのである。この数字は年収300万~499万では19.7%、年収500万~799万では3.8%、年収800万以上では0.1%になる。つまり高収入男性で「交際相手がなく異性との交際に興味がない」と回答している人はほとんどいないのである。実際、本調査で年収800万以上と回答した男性のほぼ大半は既婚者であった。同様の傾向は学歴や雇用形態でも見られ、定職についている割合は既婚者>交際中>交際相手なし・交際に興味あり>交際相手なし・交際に興味なしの順で高くなっている。

© The Tokyo Foundation for Policy Research All rights reserved. 出典=「データから読み解く 日本の少子化の要因」

増えた未婚者の大半は低収入、非正規・無職の男性

仮に、恋愛や結婚をしないことが「若者の価値観の変化」や「娯楽の多様化」であれば、収入や雇用形態・学歴でこのような差が生じることはない(正規職員・高所得者層でも一定程度の未婚者や異性との交際に興味がない人がいるはずである)。しかしながら実際には、恋愛や結婚をしていない増えた未婚者の大半は、低収入、非正規・無職の男性なのである。

また、このような経済格差は異性間との性交渉の経験の有無にも表れている。異性との性交渉経験がない人の割合は男性(18~39歳)では1992年の20%から2015年には25.8%に増えているが、この異性間性交渉の経験も男性では時短勤務・非正規雇用・無職の人ほど異性との性交渉経験が無い割合が高くなっている。収入も同様の傾向が見られ、収入が低くなればなるほど、異性との性交渉経験がない人の割合が高くなっているのである。

© The Tokyo Foundation for Policy Research All rights reserved. 出典=「データから読み解く 日本の少子化の要因」