「岸田の次は茂木、その次は萩生田だ」
麻生氏は、茂木氏に対しては「岸田の次はお前だ。その次は萩生田(光一政調会長=60=安倍派)だ」とささやきつつ、岸田政権の「2期6年」を支援させようとしている。麻生氏にとって、岸田政権は安倍晋三元首相(昨年7月死去)とともに樹立し、育成してきた、自前の政権なのである。
麻生氏が今後、どこまで「茂木政権」に関わろうとするかは、判然としない。麻生派も、鈴木俊一財務相(70)や河野太郎デジタル相(60)という総裁候補を抱えているほか、茂木氏については、茂木派を完全に掌握できておらず、他派との連携を含めた総裁選戦略が立てられていないように見えるからだ。
岸田首相も今回、そこを突いた。茂木氏が幹事長として衆院選などを経て政治力を高めても、茂木派が一丸となって押し上げることがないようにする「仕掛け」が、小渕氏の党4役入りだったのだろう。
森氏が青木氏に替わって後ろ盾になる
小渕氏の登用は、岸田首相がこれまで支援を受けてきた森喜朗元首相、6月に死去した青木幹雄・元自民党参院議員会長の要望(遺言)を受け入れた面もある。
森氏は、8月29日に行われた青木氏の党葬で、遺影に向かって「心残りは小渕恵三さん(元首相)のお嬢さんのことと思う。一生懸命、あなたの夢、希望がかなうように最大限努力する」と語った。安倍派に強い影響力が残る森氏が、青木氏に替わって小渕氏の後ろ盾になるという意思表明でもあった。
これには、森、青木両氏が昨年8月、岸田首相と会食した際、直後の内閣改造・党人事に向け、同席していた小渕氏(当時、組織運動本部長)を幹事長などの要職で起用するよう求め、首相が1年後の課題として引き取ったという経緯もあった。
青木氏は、小渕、森内閣で官房長官を務めたほか、参院自民党で幹事長、議員会長を歴任し、「参院のドン」と呼ばれた。茂木氏に対しては、2018年の総裁選対応で、当時の竹下亘会長らの意向に反して安倍陣営に走ったため、青木氏が「自分さえよければいいのか」などと怒って事務所への出入りを禁止するなどし、その後も了解なしに平成研の会長に就いたことにも強い不満を示していた。青木氏の影響下にあった参院茂木派の幹部らは、今なお茂木氏に対して「面従腹背」の姿勢を取っている。