自公は東京での選挙協力を復活させた

外交・安全保障政策としては、8月18日の日米韓首脳会談で、日米同盟、米韓同盟を強化し、日米韓の安保協力を先端技術協力やサプライチェーンの強化を含む経済安保分野へ引き上げることで一致した。3月の日韓首脳会談の成果がここに実を結んだと言える。

8月24日からは、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を国際原子力機構(IAEA)の基準に沿って進めている。中国は「核汚染水」放出と断じ、日本の水産物の全面禁輸という嫌がらせに出てきたが、韓国の反発は小さかった。政府は、国内消費の拡大や海外市場の新規開拓で水産業を支援する。

物価高対策としては、8月末のガソリン小売価格が過去最高を記録すると、石油元売り企業への補助金を延長し、10月中に1リットル175円程度の水準に抑える方針を示した。

政治問題的には、8月31日の公明党の山口那津男代表との会談で、次期衆院選に向けて東京でも自公両党が選挙協力を復活させることで合意した。5月に東京28区の候補者調整で決裂し、東京で相互推薦しないことになったが、公明党の要請を受け、首相主導で関係修復させている。

2022年2月17日、会見する岸田文雄首相
2022年2月17日、会見する岸田文雄首相(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

旧統一教会との決別をアピールへ

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への対応についても、10月中にも解散命令を東京地裁に請求し、教団との決別をアピールする。

11月末をメドに、マイナンバーカードをめぐるトラブルの総点検を完了する。

その一方、防衛費5年間で43兆円への大幅増額や異次元の少子化対策の財源をめぐる議論は封印している。自民党内には税収増や国債発行で賄うべきだとの声も少なくない。

岸田首相の「懐刀」である木原誠二前官房副長官(53)が9月22日の自民党人事で、幹事長代理兼政調会長特別補佐に就任したことも、衆院解散戦略に関わる一環だとうかがわせる。

木原氏は、官房副長官として、内政や外交一般で政策を仕切るだけでなく、公明党とのパイプ役を担うなど、政局を動かす立場にいた。だが、妻の元夫の死亡をめぐる週刊文春報道が続いたため、家族への影響を考慮し、8月中に留任辞退を首相に伝えていた。

首相はこれを踏まえ、政局判断や重要政策の連絡役として自ら党に押し込んだ。木原氏は衆院の早期解散に消極的とされるが、首相は翌23日には首相公邸に呼び、「減税」を含む経済政策や衆院選のタイミングをめぐって意見交換したとみられる。