「世界征服」のために漫画を読む

キングダム』(原泰久、集英社)という漫画を読んだことはあるでしょうか。

紀元前259〜紀元前210年の中国を舞台にした話で、後に始皇帝となる秦国の王・政が中華を統一する過程を描いた戦乱ものの漫画です。山﨑賢人さん主演で映画化もされています。

主人公の信が言います。「境があるから内と外ができ敵ができる。国境があるから国々ができ戦いつづける。だからあいつは国を一つにまとめるんだ。そして俺はその金剛の剣だ」

私の夢は自分がカリフになることではありません。カリフを目指す政を助けるカリフ制再興のための道具、金剛の剣になれればよいのです。

『キングダム』は国境をなくして国々を一つにする「平天下」というまさにカリフ制再興の物語ですが、秦の歴史を見るとわかる通り、その方法はまだ書かれていないものの、法家の説による統治です。

中国の歴史の中で、結局秦は天下を統一しましたが、すぐに滅びてしまい、中国では儒家の思想が支配的になります。

ちょうど、漫画『キングダム』では759話で韓非子が登場したばかりですので、『キングダム』の法家解釈はまだよくわかりませんが、一言で言えば人定法、人間が定めた法です。

結局、秦は、西洋帝国主義列強と同じく人間が定めた不完全で不正な法によって人を治めようとしたので政が死ぬと間もなく瓦解がかいします。

人類の解放が国境の廃絶にあること、しかしせっかく国境を排して国々を滅ぼしても、神の法でなく、人間の作った法で人間を支配しようとする限り、成功しない。そこまで含めて、カリフ制再興マンガなんです、『キングダム』は。

実はコーランや法学書にはカリフ制再興に繋がるような具体的なヒントは書かれていないんです。現代の漫画にはそこに通じるヒントが描かれていたりしますから、私はすべての漫画を「カリフ制再興」に紐付けて読んでいます。

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荒唐無稽に見えるテーマを掲げたエンタメがいい理由

この辺の話は私の『13歳からの世界征服』(百万年書房、2019年)に詳しく書きましたが、『キングダム』のテーマは「世界征服」と言えます。皆さんもつまらない夢や目標などを持つことをやめて、「世界征服」を目標に掲げて生きてみてはどうでしょうか。

漫画とかアニメでもいいですが、多くの人が親しむエンターテインメントは、「世界征服」くらい荒唐無稽に見えるテーマを掲げたものの方がいいんです。

中途半端に実現しそうな、リアリティのあるような夢や目標をテーマにしたものは、読んでいる人間が勘違いしてしまうのでダメです。

そういうテーマの漫画やアニメは、皆が潜在的に持っている肥大化した自我を刺激するような話になっていて、もちろんそれができる人もいるでしょうが、できない人の方が圧倒的に多いので悪影響の方が大きいのです。

私が好きな世界征服ものは『キングダム』の他に『科学忍者隊ガッチャマン』『秘密結社 鷹の爪』『コードギアス(シリーズ)』『暗殺教室』などで、未読・未視聴の方はこの辺から始めてみることをすすめます。

目標や夢というのは、人と違えば違うだけいい。悩みというのは、大抵他人との比較から生まれます。私は昔から人と望み自体が違ったので、あまり人を妬みようがないところがありました。

特に今はカリフ制再興以外に興味がなく、カリフ制に成功している人は誰もいないので、妬む対象がいません。皆さんもすべての行動を世界征服に紐付けて考えると、日々の小さな悩みなんてどうでもよくなります。