「男気ジャンケン」はこうして生まれた
逆転の発想「男気ジャンケン」も遊びから生まれた企画だ。
「みなさんのおかげでした」では撮影が終わるとよく、演者さんも一緒にスタッフでご飯を食べに行ったものだが、なにしろゴールデンタイムの番組のメンバーだ、高級なステーキ屋、寿司屋、天ぷら屋など、今とは違って「贅沢は普通にするもの」だった。しかし楽しんでばかりもいられない。
食事が終わって一息つくと、タカさんが「ジャンケンするぞ」と言い出す。「負けたヤツが全額払う」ことを目的としたジャンケンだ。
参加人数は日によってまちまちだが、5人だろうが10人だろうが高級店だからお会計はそれなりの金額になる。負けたらショックは大きく、勝った方は負けた人間の反応を見て盛り上がる。
ある日、俺が負けて払うことになった。実際に負けて払う立場になると、これが金額以上に悔しい思いをする。「テレビでやり返してやろう」と思った。この遊びを企画にしたら、企画会議では大いにウケてやろうやろうと盛り上がったが、局側から「イジメに見えるからダメ」という指摘を受けた。
大人の渾身のジャンケンは面白い
だがどうしてもやりたかった俺は「だったら、ジャンケンに勝った人が『払いたい』と言って払うのはいいでしょう」と粘り、そうなると局側も「払いたいという意思が、勝った人にあるんだったらいい」と答えざるを得ず、話は強引にまとまった。
しかし、ふと思った。ジャンケンに勝ったにもかかわらず「払いたい」気持ちって一体なんだろう? どうしたら不自然に感じないか。
そこで思い浮かんだのが「男気」という言葉だった。
男気ジャンケン。それはいかにも男気がありそうな、かっこよくて頼りがいのあるゲストが集まり、今日の「払わせてもらえる人」を賭けて、渾身のジャンケンをするものだ。その様は見ている者たちに勇気と爆笑を与えてくれた。
この企画は番組が終わった後も定着しているようだ。ユーチューバーが類似企画を流していたり、街で見知らぬ人から「男気ジャンケンやってください」とお願いされたり、レジに並んでいたら、前のグループが男気ジャンケンをしているのを見かけたりして、ああ浸透してるなと思う。
こういう企画の独り歩きははっきり言ってうれしい。見知らぬ人たちの男気ジャンケンに巻き込まれて、負けて、俺が払っているときはなんとも言えない気持ちにもなるが、それでもやっぱりうれしかった。