20代の家事代行サービス利用単価が上がっている

また、民間や各自治体が提供する「外部サービス」の充実も欠かせません。

これは、私の修士論文以来の研究テーマの一つでもありますが、そもそも家事・育児時間を軽減しようとすれば、方法は大きく3つしかないのです。すなわち、(1)内製化(家族間シェアなど)(2)時短化(3)外部化(外部サービスの利用)です。

このうち、1(内製化)では経済活動が発生せず、GDP(国内総生産)にもカウントされません。「夫がやるか、妻がやるか」といった議論に留まる限り、家事・育児が「無償労働」と見なされ、日本経済にはほとんど貢献しないこともあり、本来は3(外部化)の拡充が望まれます。

かつては、「女性が家事を外注するなんて」といった社会の外圧や、女性自身の罪悪感も大きかったでしょう。コロナ禍前の’18年、経済産業省が外部に委託して実施した調査でも、家事代行サービスは約8割に認知されていた半面、利用者はわずか1.8%に留まっていました(’20年 日本経済新聞、1月4日掲載)。

ですが近年、若い世代がSNSに後押しされ「私も使ってみよう」と利用するケースが少しずつ増えています。家事代行サービスのCaSy(カジー)でも、’20年の時点で、4週間に1回以上利用する「定期利用」の顧客単価が、’15年秋ごろに比べて15~20%程度上がったといいます。とくに単価の上がり幅が大きいのは、20代(約50%)だそうです。

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ベビーシッターについても、ある民間企業(キッズライン)の登録者による性犯罪や不祥事が相次いだ結果、’22年、悪質なベビーシッターや認可外保育所について、自治体間で情報共有する仕組みがスタートするなど、一定の前進がみられました。適正な人材確保など、まだ課題は多いものの、こちらも今後、着実に伸びていくでしょう。

社食を買って帰るという選択肢

このほか、調理では「置くだけ社食」サービスの「オフィスおかん」(OKAN)が、従業員だけでなくその家族の夕食にも貢献する様子を、先日取材しました。福利厚生として、企業内に健康惣菜などが入った冷蔵庫を設置し、原則1品100円で利用できるサービスで、ANAグループなど利用企業の一部では、従業員が「今晩の家族のおかずに」と買って帰るケースもあるとのこと。つまり、社食代わりとしてだけでなく、従業員の私的な家事(調理)の負担軽減や家族の健康にも、貢献している様子がうかがえるのです。

企業(職場)も今後は、従業員本人だけでなく、彼らの家族の健康や幸せにも繋がる福利厚生の提供を検討すべきではないでしょうか。令和の時代は、家族の健康にまで配慮してこそ、離職率の抑制や新規人材の獲得に繋がるはずです。

★提言1:男性も、家事・育児を「手伝う」のではなく「担う」べし
★提言2:企業も従業員本人だけでなく、その家族の健康にも繋がるサービス導入を