安全の意識が低いのは自転車の乗り手ばかりではない。車道に自転車レーンが設けられているところがあるが、そこに平気で自動車を駐車する人がいる。駐車車両があると、自転車は車道側に逸れて避けることになり、後続車両の確認で頻繁に背後を見る必要がある。これはかなり危なっかしい。

歩道についている自転車レーンも安全とはいえない。色まで変えて自転車レーンであることを示しても、そこを歩道感覚で普通に歩く歩行者が多い。

まずは、自転車のルールを明確にすべきなのだ。自転車は軽車両という「クルマ」なのだから、原則的には車道の走行を徹底したほうがいい。例外をつくるのは、子どもを前後に乗せてゆっくり走っている自転車くらいでよい。

ルールを自転車の乗り手だけでなく、自動車のドライバーや歩行者に周知することも大切である。自転車側がいくらルールを守ろうとしても、自動車や歩行者がそれを無視していると、結局、自転車も危険を避けるためにルールを逸脱せざるをえなくなる。社会全体で自転車のルールを共有してこそ、安全な交通が実現するのだ。

路上喫煙を撲滅した「千代田区方式」が参考に

ルールを定着させるやり方は、路上喫煙を撲滅した「千代田区方式」が参考になる。千代田区は当初、路上喫煙をしないようにマナーの向上を訴えたが、改善が見られなかった。そこで、全国に先駆けて「生活環境条例」を制定し、指定地区での路上喫煙やポイ捨てに過料を科した。

その結果、住民やオフィスワーカーが路上喫煙する姿はほぼ見かけなくなった。この状態になるまで、条例制定から10年はかかっている。ルールの定着を受けて、千代田区は「マナーから、ルールへ。そしてマナーへ」という標語を掲げて、マナー回帰に動き出した。罰則なしで路上喫煙の禁止ができるなら、それに越したことはない。

自転車のルールも同様だ。まずはルールを明確にして、違反者は容赦なく取り締まる。ルールが浸透するまで時間はかかるだろうが、定着すればそれから規制緩和していけばよい。

同時に自転車用のインフラ整備も必要だ。自転車の普及率が非常に高い「自転車王国」であるオランダやデンマークに行くと、自転車レーンの広さに驚く。幅は車道でいうと1車線くらいあって、もはや歩道のほうが狭い。

もちろん自転車レーンに自動車を駐車する人はいないし、歩行者も歩いていない。オランダとデンマークの共通点は、山がなくて平らな土地が広がっていること。自転車移動にもってこいだ。幼いころから自転車が身近にあって、ルールをよく教育されているから、ドライバーや歩行者も協力的だ。

インフラ整備やルール教育も含め、自転車に関してはオランダとデンマークから学べるものは多い。特に平地が広がっている東京都などの都市圏はまるごとオランダ式を導入すると、住みやすい街になるに違いない。