法改正の背景には、電動キックボードのシェアリングサービスを提供する企業「Luup」のロビー活動がある。

シェアサイクルのように、小型モビリティのシェアリングサービスを認めて車の利用を減らすこと自体は、社会にとっていいことである。

しかし、安全とのバランスを欠いた形で電動モビリティのシェアリングサービスを推し進めると、反発を招いてかえって普及が妨げられる。

実際、23年4月にパリで実施された住民投票では、約9割の住民が電動キックボードのシェアリングサービスに「反対」の意思を示した。

フランス政府も国民の電動キックボードへの反発を重く受け止めており、交通違反の罰金額を引き上げるなど、規制強化策を発表している。一方日本は、フランスという格好の先行事例があるにもかかわらず、規制緩和に突っ走っている。正気の沙汰ではない。

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運転免許を必須にするべき

では、どうすれば電動キックボードの安全性を担保できるのか。自動車の交通ルールを知らない人が乗ると危険なので、まずは運転免許を必須にするべき。ヘルメットの装着も任意ではなく、バイクに準じて義務化するべきだ。

免許は道路交通法を学ぶという点で、50㏄以下の原動機付自転車を運転できる原付免許さえ持っていればよい。それなら16歳から運転できる。そして、実際の運転も原付に準じるべきだ。

法改正して以来、歩道での運転が目につくが、特に高齢者にぶつかったら悲惨な事故につながる。また、一方通行の道路を(自転車と同じように)反対側から入ってくるが、これも危ない。歩行者にとってはハッとさせられる危険な走行になる。走行ルールを自転車並みにしてしまうと、酒気帯び運転等に対する規制が曖昧なので、むしろバイク並みに規則を厳格化し、法令遵守を徹底させるべきだった。

例えば、自動車の危険運転致死傷罪は、幼い姉妹が命を落とした東名高速の飲酒運転事故がきっかけで制定された。同様の事故が起きてからでは遅い。大事故が起こってからではなく、未然に防ぐために、早急な見直しが必要だ。

電動キックボードの規制強化は必須。しかし、そもそもその前に手をつけるべきモビリティがある。自転車だ。

自転車は便利な乗り物で、地球環境にも健康にもいい。ところが、ルールがおかしかったり、徹底されていなかったりで、危険な乗り物と化している。

自転車は、車道を走るのが原則である。道路標識で許されていたり、交通状況でやむをえない場合は歩道を走るが、その際も歩行者が優先だ。しかし、ルールを忠実に守っている自転車の利用者を見たことがない。