40歳女性の7割以上が自然妊娠での出産が可能
では、果たして40代の女性は、30代と比べてどの程度、妊孕力(子どもを産める力)があるのでしょうか。過去、大掛かりな調査研究がいくつも実施されているので、その状況を振り返ってみましょう。
大規模な調査研究として古いものでは、不妊治療などがほぼなかった1963年にフランスのアンリ(Henry)が行ったものがあります。これは、夫と妻を合わせたカップルで見た不妊割合なのですが、20歳3%→25歳5%→30歳8%→35歳15%→40歳32%と加齢に応じて確かに数値は上昇しています(出生力調査なので、流産した場合も不妊に入る)。ただし、これは夫婦での不妊割合のため、この中には夫側のみの不妊原因も含まれています。少なく見積もって4分の1は不妊原因が夫側のみにあると言われるので、それを差し引くと、40歳女性の不妊率は25%程度でしょう。
不妊率25%という数字は、20代の3%と比べて跳ね上がっていると見て取れますが、一方でこの25%を引いた75%の女性は40歳でも出産可能といえます。不妊治療がほとんどなかった1960年代でも、7割以上の女性が普通に出産できるというこの数値は、以後の調査・研究でもたびたび示唆されるところとなります。
アメリカの研究でも「40代前半女性の不妊率は28.7%」
続いて、アメリカのメンケン(Menken)たちの1986年の報告を見ていきましょう。メンケンたちは、1965年の全米出生力調査(The National Fertility Survey)と、1976年、1982年の全米家族調査(the National Surveys of Family Growth)の3つの調査結果から、不妊の割合を導いています。
この中では不妊治療を受けた人や避妊中の人を徐外しているため(その中にも不妊の人はいる)、不妊の割合を示す数値に多少の問題点が残るのですが、おおよその目安となるのは確かです。
この調査によると、20代前半の女性の不妊率は7.0%、30代前半は14.6%、30代後半は21.9%となり、40代前半には28.7%となっています。こちらでも、40代前半の71.3%が不妊ではないという数値が示されていますね。
ちなみに、ダメ押し的な傍証も一つ上げておきます。2022年12月19日のNHK放送「あさイチ」は、2020年の40代妊娠中絶件数は1万4522件にも上る(厚生労働省「衛生行政報告例」)ことを取り上げました。これは10代よりも多い数字だそうです。「40代は妊娠など無理」といった誤解から避妊を怠り、こうした「思わぬ妊娠」が生まれていると、番組では示唆していました。先ほど示した通り同年における、40代で不妊治療から出産した子どもの数は1万3235人です。「中絶件数」がそれを上回っているのは皮肉なことでもあり、またそれだけ、40代一般の妊孕力が高いということでもあるでしょう。