1on1ミーティング本来の目的とは

なぜ上司は自ら解決したくなるのでしょうか。その理由は3つ考えられます。

1つは、これまで常に自ら解決してきましたし、メンバーに相談されたら解決してあげるのが上司の役割だと思っているから。

2つ目には、メンバーより自身の方が高い解決力を持っていると考えているため。これらは、重要かつ緊急な「一般的な面談」においては素晴らしい上司力(解決力)を発揮していると言えますが、1on1ミーティングの目的とは異なります。

そして3つ目には、メンバーの問題を解決してあげないと、上司としての存在意義が薄まってしまうという恐れから。1on1の場では、問題解決してあげなくても、上司の存在価値が失われることはありません。やはり、「メンバーが自身のありたい姿に自律的に成長するのを支援する」という1on1ミーティング本来の目的、サポート役であることを思い出す必要があります。

「解決」に焦点をあてるべきではない

④「なぜ・なぜ」と原因論型の質問で追い詰めてしまうと、ありたい姿は引き出されない

「なぜそんなことになったの?」「なぜ毎回、同じことが繰り返されるの?」

このように「なぜ・なぜ」と原因を追求していく問答は多くの場面で目にします。これは「原因論」的アプローチといえます。上司はメンバーの問題解決を手伝おうとしているのですが、メンバーは責められたと感じます。

一方、「そんなことになって、どんな気持ち?」「本当はどんな風になったら良さそう?」

このような問いかけは、“メンバーがそんな気持ちを感じるのは、本当は何を得たいからなのか”を質問しており、「目的論」的アプローチといえます。

本田賢広『1on1ミーティングの極意』(ワン・パブリッシング)

原因論的アプローチは、物理的な問題解決には大変有効ですが、人に対して上記のような使い方をすると、メンバーの意欲を削ぐ結果になりかねません。

ありたい姿とは「本人にとって価値ある答え」「本人が心から望む状態」、言い換えると私たちが欲する「目的」であるため、コーチングでは目的論的なアプローチが有効であるということになります。

それによりメンバーは上司への信頼を深め、自らのありたい姿に気づき、主体的になっていきます。

コーチングは「解決」ではなく、「人、気持ち」に焦点を当てて行います。これは極めて大切なポイントです。

関連記事
これだけは絶対にやってはいけない…稲盛和夫氏が断言した「成功しない人」に共通するたった1つのこと
日本を代表するIT企業はどこで間違えたのか…楽天を存続の危機に追い込んだ三木谷社長の「3つの大誤算」
ソニーはいつまでスマホを作り続けるのか…劇的復活したソニーがアップルを超えるために必要なこと
ほかの国なら「ピッ」で空港から出られるのに…「外国人向け切符」に大行列を強いる日本の残念なIT事情
「深いいスピーチ」のはずが50代社員のモチベーション急落…有名大企業の研修で社長が悪気なく話したこと