上司と部下の「1対1」ではどんなことを話すべきなのか。『1on1ミーティングの極意』(ワン・パブリッシング)を書いた本田賢広さんは「1on1の目的はメンバーの自律的な成長の支援で、上司はあくまでサポート役だ。それを誤解していると、部下の可能性を潰すことになる」という――。
仕事の間違いを非難するアジアのビジネスマン
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1on1ミーティングがうまくいかない根本原因

「ありたい姿がないメンバーはどうすればいいか」「1on1ミーティングの最後に次回までの実践について訊いても、メンバーには『言わされ感』があり、前向きなアクションプランを引き出すことができない」

こんなお悩みをよく聞きます。上司がメンバーのために質問しても、メンバーからはポジティブな答えが返ってこないループに陥っているとすれば、その真因と、背景にある上司自身の心の動きを理解することが大切です。

上司が「このメンバーにはありたい姿がない」と思う時、メンバーは「ビジネスパーソンとして、ありたい姿をしっかり持っているべきでしょう?」という、上司からのある種の圧を感じるかもしれません。上司が心の深いところでメンバーを認めていなければ、メンバーがありたい姿に想いを馳せるのは難しくなります。

「こんな職場や働き方は、自分には合っていない」「あんなふう(人)にはなりたくない」という言葉を聞くことがありますが、それはその裏側に「本当はこんな職場で、こんな働き方ができたらいいな」「こんな人に憧れるな、本当はこんな自分になりたいな」という想いがあるということではないでしょうか。

部下の可能性を潰してしまう4つの質問

つまり、どんな人にもありたい姿はありますが、それがどんなものかを自覚できていないことがあるということを意味しています。したがって上司には、「ありたい姿を一緒に明らかにしていこう」というスタンスが大切になります。

しかし私たちは、「相手をコントロールしよう」としたり、「人間は感情の生き物である」ことを忘れたりしがちです。それにより、上司がメンバーにやってしまいがちな、ありたい姿が引き出されない質問をしている可能性があります。それは、次の4種類の接し方です。

①理想的な結果について訊く前に、アクションプラン(解決策)についてばかり質問する
②上司が期待するあるべき姿(正解)に導こうと、誘導尋問をする
③上司がメンバーの悩みを解決しようとして、情報収集や仮説検証の質問をする
④「なぜ・なぜ」と、原因論型の質問で追い詰めてしまう