「うつ病・躁うつ病」は、高所得国全体ではダリー値が日本以上に深刻であり、がん(全部位)を除くと第4位の高さとなっていることから、国際的に極めて大きな克服課題となっていることがうかがわれる。
うつ病・躁うつ病以外で、高所得国全体で日本以上に深刻さが目立っているのは、糖尿病、不安障害、道路事故、薬物乱用などである。日本は、自殺率は高いが、うつ病・躁うつ病や不安障害などの精神疾患は国際比較すると、むしろ軽い方である点に注意が必要である(後段参照)。
難聴が脳出血や大腸がんより深刻という意外な事実
反対に、日本の値の方が高い点で目立っているのは、がん(全部位)のほか、大腸がん、胃がん、すい臓がんといった各部位のがんである。ただし肺がんだけは高所得国全体とほぼ同水準である。
がん以外では、脳梗塞、肺炎、難聴、脳出血、変形性関節炎、腎臓病の値も高所得国全体より高くなっているが、高齢化が世界一進んでいるという要因が影響している傷病が多い。脳血管疾患や腎臓病については高齢化のほか、塩分摂取量が多い食生活が影響している側面もあろう。
いずれにせよ、寿命・健康ロスの観点からは、腰痛の方が認知症や肺がん、脳梗塞より深刻であり、また難聴の方が脳出血や大腸がんより深刻であるというのは意外な事実である。
死因でなく、その傷病で悩み続けなければならないかどうかという観点からはそうした事実が浮かび上がるのである。健康ロスの大きな変形性関節炎、転倒についても案外重要な傷病であることが分かる。
保健医療政策上は、死に直結する傷病だけでなく、こうした傷病の予防やリハビリ、ダメージ緩和にもっと力を入れた方が国民の厚生向上にむすびつく可能性は高いと言えよう。