また参考図(図表2)には、各傷病について、寿命ロスと健康ロスの割合の先進国平均を図示した。

【図表】(参考)DALYに占める寿命ロスと健康ロスの割合 (高所得国)

図表1では、がんについては、各部位のがんを掲げたが、全部位では19.7%と傷病の中で最も大きい。がんは死因別死亡率でも圧倒的にトップとなっているので、寿命をそれだけ縮めることによる損失が大きいためである。

高所得国全体においては、がん(全部位)が16.2%であるので、これと比較しても日本の値は大きくなっており、がんは特に日本においては最大の課題であることがうかがえる。図表1とともに掲げた参考図(図表2)は、各傷病のダリー値の総数に占める割合。がんの場合、寿命ロスが9割以上を占める。

肺がんや脳梗塞よりも深刻な腰痛や認知症

がん(全部位)を除くと、傷病別のダリー値の第1位は心筋梗塞などの虚血性心疾患である。これは、高所得国全体と比較するとシェアはやや小さい。やはり日本人は肥満が他の先進国と比較して少ないからであろう。

脳血管疾患は、脳梗塞と脳出血(あわせて脳卒中と呼ばれる)に分けているので虚血性心疾患より順位が低いが、2つを合計すると6.6%と最多となっている。脳血管疾患は死因としても大きいが、罹患後に車イスや寝たきり生活を余儀なくされる可能性が高い疾患でもあることから健康寿命の損失という側面からもダリー値が大きくなっている。

ランキング第2位は「腰痛」、第3位は「アルツハイマー病など認知症」(かつて痴呆と呼ばれたが2004年から名称変更が進められた)である。

これらは、死因別の疾病構造には登場しないが、健康という側面からは損失の大きな病気であり、参考図に見られるように、腰痛の場合、そのほとんどが寿命ロスではなく健康ロスであり、認知症の場合も3分の1以上は健康ロスである。

健康ロスは当人や周囲の者が働けないことによる経済ロスにつながる(特に勤労世代においては当人が働けないことが大きな負担となる)ことから、当人や周囲の苦痛・心労ばかりでなく経済的な負担の面からも克服が大きな課題となっている。ここで紹介したダリー指標ではじめて腰痛や認知症の深刻さが分かるのである。