「親に嫌われた」と受け取ってしまう

子どもはコミュニケーションの経験値が少ないため、投げかけられた言葉をそのまま受け取ります。これがそのまま、「否定が子どもにとってプラスにならない理由」です。

親の思い通りに動いてくれないとき、あるいは、奮起を促そうとするときの否定を、子どもは額面通りのメッセージとして受け取ります。「お前はダメだ」と言われたら、そのまま「自分はダメだ」と受け取るわけです。これは、「認める」「見守る」「待つ」とは真逆の関わり方をしてしまっていることになるのです。

ドリルを真面目にやらない子に「どうしてちゃんとしないの!」
鉄棒の練習をしていて「そんな持ち方じゃダメだ!」
部屋中におもちゃを出しっぱなしにする子に「散らかさないでよ!」

親から否定されると、子どもは「お父さん・お母さんが自分のことを嫌いになっちゃった」と感じます。親からしてみれば、行動に対して「ダメ」と言っただけなのに、子どものほうは「お父さん・お母さんと自分との関係すべてがダメ」というふうにとらえてしまうのです。コミュニケーションの経験値が少ないのですから、仕方のないことです。

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「~してはいけない」ではなく「~しよう」

だからこそ親御さんには、「なぜ否定するのか」をもう一度、考えてほしいのです。

おそらく、「うまくいって喜ぶ子どもの顔が見たい」「本来持っている能力を十分に発揮してほしい」「ケガや病気をしてほしくない」という、子どもの幸せや安全を願う気持ちと、親自身が安心したい気持ちが入り交じっているのでしょう。

それはとても自然な感情です。ただ、そこで考えてほしいのです。「子どもの幸せ」と「自分の安心」を両立するために、否定的な言葉を使わずに済ませることはできないだろうか、と。

わかりやすい例をひとつ挙げましょう。

「廊下を走ってはいけません」という張り紙と「廊下は歩いて移動しましょう」という張り紙とでは、子どもたちが廊下を走る割合は後者のほうが圧倒的に少ないという実験結果が出ています。

「~してはいけない」ではなく、「~しよう」と肯定的に伝えたほうが、子どもは素直に受け取り、行動できるのです。