さまざまな疾患の原因につながる「グルテン」
さらに小麦には、タンパク質からできた「グルテン」と呼ばれる成分が含まれています。じつはこのグルテンもカラダに悪影響があることがわかっています。グルテンはうどんやラーメンのコシになったり、パンの弾力のもとになる成分。いい食感を食品に与えてくれるのですが、その粘り気ゆえに消化しにくく、腸粘膜を炎症させやすいのです。
これが「リーキーガット症候群」(腸もれ)を引き起こす原因となり、腸の粘膜に損傷ができて、腸内にあるべき物質が腸から漏れ出してしまうのです。リーキーガット症候群はさまざまな疾患の原因ではないかと考えられています。
私自身も、低糖質食を実践しています。主に小麦と白米の食べる量や回数を控えているのですが、とくに小麦を食べると、その直後にお腹が張ったり、頭が鈍くなったりすることを実感します。お腹が張るのは、腸内環境が悪化しているあらわれです。そしておそらく、腸内環境が悪化することでセロトニンなど脳に必要なホルモンの産生も減ってしまうのではないかと考えています。その結果、頭の回転が鈍ってしまうのです。
私のクリニックに通院している患者さんでも、糖質制限をしている人は、制限していない人よりも心理テストの結果が改善しやすい傾向があります。これも糖質の摂取を減らすことで、脳内物質の産生にいい影響を与えた例だと言えるでしょう。
日本人の多くが糖質依存に陥っている?
糖質制限をすると、カラダにとってはいいことずくめなのですが、なかなかすぐには実践できない人が多いのも事実です。現在「健康の常識」と思われていることとは逆の食事法であることも理由の1つでしょうが、それだけでなく、糖質には非常に強い精神的依存性があるからでしょう。麺類やパン、ご飯、甘いものは、無性に食べたくなるものなのです。
私は、現代の日本人の多くが糖質依存だと考えています。今まで見てきた患者さんのなかで、とくに糖質依存だった人の例をご紹介しましょう。
その人は糖尿病の患者さんで、かなり厳格な糖質制限を行っていました。当初はインスリン注射をしていましたが、治療のかいあって服薬だけになり、長期的な血糖値の指標となる「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の値も改善。10.5%あった値が7.0%になり、認知機能も顕著に改善していました。そのまま治療を続けていたなら、正常値(4.6~6.2%)まで戻っただろうと思います。