男尊女卑な政党で評価されるための“迎合”

自らも女性である杉田水脈議員が、どうしてこんな「女性差別」や「女性蔑視」の暴言を繰り返すのか? 表面的な言葉だけで考えても、答えは出ないと思います。

しかし、先に紹介した「順応への圧力」という視点で読み解けば、どうでしょうか。

杉田議員が所属する自民党は、昔から女性蔑視の発言が目立つ政党です。

第一次安倍政権時代の二〇〇七年一月二十七日、柳沢伯夫厚生労働相は松江市で開かれた自民党県議員の決起集会において、人口減少と少子化問題に関する話で「女性は一五歳から五〇歳までが出産をしてくださる年齢。『産む機械、装置の数』が決まっちゃった」と、女性を出産のための機械や装置と表現する発言をして、激しい批判を浴びました。

ところが、当時の安倍晋三首相は、柳沢大臣を罷免せず、厳重注意に留めました。

このような、古い時代の男女観(社会的・文化的な性自認を表すジェンダーという言葉が日本に入ってくる以前の思考)、つまり男性の方が女性より優位だという前提の男尊女卑が支配する政党の中で、女性の国会議員が「自分の有能さや存在価値を男たちに認めさせる」にはどうするのが一番効果的なのか、杉田議員は考えたのかもしれません。

集団内での地位向上の引き換えに捨てたもの

その結果として導き出された結論が、内部で共有される男尊女卑の価値観や行動原理に沿った行動をとり、それを目立つ形でアピールすることなら、杉田水脈議員の「女性なのに女性を貶める」という不可解な行動にも一応の説明がつきます。

山崎雅弘『この国の同調圧力』(SB新書)

女性差別に加えて、LGBTの人には「生産性がない」という暴論(月刊誌「新潮 45」二〇一八年八月号への寄稿、同誌はこの記事が原因で同年十月号を最後に休刊)など、杉田議員は数々の問題発言で社会的な批判を浴びましたが、にもかかわらず、彼女は二〇二二年八月十日に発足した第二次岸田改造内閣で、総務大臣政務官という政府の役職に任命されました(国民の批判と国会での追及を受けたのち、十二月二十七日に辞任)。

この抜擢人事は、杉田議員の自民党内での「アピール」が成功した結果だと見ることも可能です。けれども、自民党の議員として自らの「女性差別」の暴言を撤回せず、謝罪もせずに居直り続けた杉田水脈議員は、男尊女卑の価値観を共有する集団内での地位向上と引き換えに、人間として大事な何かを自ら捨ててしまったのではないか。

私には、そんな風に思えます。

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