開拓団の女性たち発した「卑劣」な言葉

これは、あの、いわゆる人間の性の恐ろしさだと私は思っとるの、なんていうの、中には、あの衆、いいことしてきたで、どやったね? 大きかったね? という人たちがいたの。そういう人も男の人には飢えとるの。わたしは子どもで意味がわからんのに、ものすっごく卑劣だ〔と思った〕。だってそんなところへ二人行くなんていいことじゃないじゃない。許せんなーと、その時は思った。

――それは女性が言うのですね?

女性が言うの。それは今、考えるんだけど、その人も、人間的に飢えとる、若い身体の女性が子どもだけ押し付けられて、ね。そいう言葉が出ても不思議ではないな。

――けど、今の時点では……

この人たちも悲しかったんだな。大人になって考えると、戦争のなかで出てきた問題なんだなと。

「性接待」した女性は「汚れた女」と差別された

平井和子『占領下の女性たち 日本と満洲の性暴力・性売買・「親密な交際」』(岩波書店)

ソ連兵への「性接待」として提供された女性たちが、出されるときこそ感謝されたが、帰ってきた後は「汚れた女」として貶められ、差別的視線にさらされたという例はよく見られる。

性暴力の犠牲者へ差別的なまなざしを向けた者は男性に限らず、女性にもあったことが、この栄美の証言からもわかる。子どもの栄美はそれに対し「卑劣だ!」と怒りを覚えたが、年を重ねた現時点で振り返ってみると、そのような言葉を発した女性たちも、夫不在のなか独りで子どもの命を守らねばならない緊張した日々を生きていた。そのような辛い状況が言わせた言葉だと、年を重ねた現在の栄美は思っている。

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