アルコール耐性の強弱を調べて分類

川口教授が言う「遺伝的要因」とは、体内にアルコールが入った際に使われる酵素の活性を指す。通常、体内に入ったアルコールは①アルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解され、さらには②アルデヒド脱水素酵素によって無害な酢酸となり、最終的に二酸化炭素と水に分解される。

この2つの酵素には複数の型があり、その型は両親から1つずつランダムに受け継ぐ。その型の組み合わせによって、アルコール耐性の強弱が決定されるのだ。

今回の研究ではアルコールパッチテストと呼ばれる「バイオマーカーテスト」を参加者に受けてもらい、アルコール耐性の強い群とアルコール耐性の弱い群に分類した。結果、3カ国トータルで54%はアルコール耐性が強く、残り46%はアルコール耐性が弱い群という比率になった。

この比率は医学研究のメタアナリシス(複数の研究結果を統合し分析したもの)で報告された分布に非常に近いという。今回の研究に用いたアルコールパッチの結果に信頼がおける証左になる。

酒を飲める人、飲めない人の所得に差はない

実験に参加したのは3500人の有職者男性で、うち日本人が約2000人、台湾が1000人、韓国が500人。正規・不正規は特に分けず、会社員を中心にさまざまな職業に就いている25歳から59歳までの男性を研究対象に、月収・年収について調べた。そして、「酒を飲める人(アルコール耐性が強い)と、酒を飲めない人(アルコール耐性が弱い)の所得に大差はない」という結果が出たのである。

「3カ国平均の具体的な月収は、アルコール耐性が強い人は4311ドル、アルコール耐性が弱い人は4288ドルという結果となりました。その差はわずか23ドルで、統計的には有意な差ではありません」(川口教授)

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その結果を聞いて、酒飲みとしては、「アルコール耐性が弱い人は、酒を飲まない分、労働時間が長いから所得に差がないのでは?」と思った。しかし労働時間(週)に関しても、アルコール耐性が強い人は46.09時間、アルコール耐性が弱い人は46.37時間とほぼ差がなく、統計的に有意な差があるとは言えないという。

次に「アルコール耐性が強い人は、週に何日も飲む日に費やしているので、副業や所得アップにつながる資格取得などをする時間がないのでは?」と思いきや、週に酒を飲む日もほぼ1日しか変わらない。