アジア・インド洋諸国のインフラ整備での「前例」

中国は一帯一路政策の下、強引とも言える手法でアジアやインド洋諸国における、海外インフラ整備でトラブルを起こしてきました。パキスタンのグワダル港においては、当初は民間用に整備としていたものを海軍艦艇も使用するようになりました。スリランカのハンバントタ港では、中国に対する債務が膨大な額となり、債務軽減と引き換えに、港湾の運営権を99年間のリース物件として中国に譲渡する事態となり、多くのスリランカ国民から主権侵害と受け止められる事態となりました。

このような事例からの類推として、北極海航路や氷上アイスシルクロードも一帯一路構想に入る、ということはアイスランドやグリーンランドへの投資、インフラ整備でも同様の手法が狙いとしてあるのではないかとの疑念に繋がったのでした。

「99年間の借地権」で観測基地を建設

実際に各地で、中国の北極進出が加速していきます。海洋観測とともに、地上での観測、地上から行う宇宙の観測、それらに伴う基地や施設の設置が北欧諸国で深まっていきました。科学調査という名目を前面に立てて行われるこれらの活動は、中国の「科学外交」と総括されます。個別具体的なお話で、その経緯を確認したいと思います。

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アイスランド北部の荒涼とした高原に2018年10月、「中国アイスランド北極科学研究ステーション」が完成しました。オーロラなどの自然現象を、両国の研究機関が共同で観測するという名目です。

建設費の約600万ドルは中国側が全額負担し、約160haの敷地は中国が99年間使用できる契約を結んで建設されました。開所式に参列した中国の金智健・駐アイスランド大使は、「中国は北極圏の主要な利害関係者として、一帯一路の枠組みを通じて協力を推進し続ける」と語ったとされています。(「【改革開放40年】第4部・一帯一路(01) 科学外交、北欧に接近」、読売新聞2018年11月21日付朝刊)。