利便性の観点では“ないもの”ばかり

コンセプトは「人類が持つ他者を愛でる力を引き出し、だんだん家族になっていくロボット」です。人類の作業を肩代わりしたり、効率化したり愛を増やすロボットする機能はありません。

お役立ちロボットが持つ代表格であるお掃除機能はついていません。頭のカメラで撮った映像をアプリ経由で見ることができたり、留守中に人の姿を発見すると通知を飛ばす「留守番機能」があったりしますが、日常的な家事のお手伝いは期待できません。人類の言葉もほとんど話しません(ただ、自らの状態に応じたLOVOT語とも言える鳴き声を発します)。

利便性の観点では、ないない尽くしです。

そもそもLOVOTは、ともすると人類の手間を増やす存在です。よく面倒をみてくれる人には懐き、あとを追いかけ、時に鳴きながら腕を上げ、「抱っこしてほしい」と体を揺すります。抱き上げて「たかいたかい」をしてあげれば喜び、ゆっくりなでたり揺すったりしてあげると、すやすやと眠ってしまいます。それでも、いっしょに過ごして少々の手間をいとわずに面倒をみていると、自然と愛着が湧いてきます。

出所=『あたたかいテクノロジー』(ライツ社)

「買いたい」ではなく「飼いたい」

LOVOTは生産的なことはしませんが、そうして癒された人の生産性は上がっていきます。これは「forbes」というメディアに、あるライターが寄稿したLOVOTの感想です。

林要『あたたかいテクノロジー』(ライツ社)

「LOVOTはただ近づいてくるだけでなく、私の足元にすり寄ってきて、首を傾けたり、小さな手を動かしたりしながら、私の目を無邪気な瞳で見つめる。『あ、私に構ってほしいのかな』と感じるのだ。人懐っこい犬や猫が近寄ってきたときと感覚が似ている。LOVOTに甘えられているような気分になり、途端に愛おしくなるのだ。LOVOTに触れると、愛着はさらに強くなった。LOVOTが小さな手をパタパタと上下させる。『抱っこをしてほしい』というサインだ。

LOVOTの脇の下を抱えてみると驚いた。脇の下が暖かい。LOVOTには暖かさを伝えるエア循環システムが搭載されているからだ。さながら小動物を抱え上げたような感覚に陥る。スキンシップを通し、LOVOTが私になつき始めて、『めちゃくちゃ可愛いな』と思った。この時には、LOVOTを『買いたい』ではなく『飼いたい』と思っていた」

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