夫も恋人も家庭も仕事も何もかも欲しい

広末さんのところは、互いの配偶者との間では揉めているだろう。不倫関係の当事者同士は反省文など出したものの、互いにまだ相手に想いがあるのは隠していない。

夫も恋人も家庭も仕事も何もかも欲しい、そして手に入れられる広末さんと、それらを手に入れられそうで入れられないI子。だが男への惚れっぽさとある種の渇望感、飢餓感は通底するものがある。広末さんも、与えられてもまだまだと欲しがり続けているのだ。

おそらくI子は愛人に子どもを認知してもらえたら、あるいは結婚してもらえたら渇望感や飢餓感は失せて満足し安定し、その後はまったく不倫などしなかったと思う。

けれど広末さんは、もし今のお相手と再婚できたとしても、必ずやまた次の不倫をするのではないか。与えられても与えられても、まだまだと決して満足しないところは、実は広末さんはI子より業も欲も深い。そこが広末さんの、女優として成功した証でもあろう。

なぜ夫を殺された妻は許したのか

さてI子は殺人罪で逮捕されるが、映画関係者が減刑嘆願書を出しただけでなく、殺された夫が「自分が悪かった」と息絶えるまでI子をかばったと聞いた本妻が、「そこまでうちの人はI子さんを好きだったんだから」と、寛大な対処を願い出たという。

結局、I子は殺人なのに数年後には仮釈放された。出所後は芸能界とは一切の縁を切り、一般人と結婚して平穏に主婦として暮らしたと伝えられている。この事件は昭和44年に起きたので、私も後に本などで知ったのだが、改めてネットで検索しても、終盤の夫婦の言動に大きく惹きつけられる。

本当のところなど想像するしかないし、想像しても当たってはいないとわかった上で書かせてもらうが。愛人の男もその本妻も、美談に落とし込める。

最初は私も、彼は本当にI子を好きだったんだと心打たれ、最後の最後にそれを見せたのは優しいと惚れた。彼の本妻もまた、実に立派な奥様、慈悲と愛情深い人だと感心した。しかし次第に、彼は本当にI子を愛していたからかばった、本妻も真に夫を思いやってI子にも慈悲を向けたのではない気がしてきた。

2人とも、一番可愛いのは自分。愛人だった男は刺されたとき、こんなに女を惚れさせた俺様は格好いい、さらに格好いい男伝説を作るため、そんな台詞を吐いたのではないかと私はにらんでいる。

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