自分勝手な「判断」や「思いつき」は逆効果
ビジネスの世界では、タクスに取り組む前の段階で「仮説」を立てることが推奨されています。
これは「仮説思考」と呼ばれるもので、最初に「これが問題の原因では?」と展開を予想して、その予想(仮説)が正しいかどうか検証を繰り返す「問題解決型」の思考のひとつです。
会社の上層部や上司から、「このタスクについて、どんな仮説を持っているのか?」と問われて、目を白黒させた経験がある人も多いのではないでしょうか?
仮説とは、現時点で把握できている「事実」に自分が持っている「情報」や「経験値」を加えることで、問題が起きている原因を「読む」ことですが、私はそれだけでは不十分だと考えています。
なぜならば、仮説にも「精度」が必要だからです。
自分勝手な判断や単なる思い込みで立てた仮説は、精度の高い情報や知見を基にしていないため、単なる思いつきに過ぎません。
会社や上司が納得するような「もっともらしい仮説」は用意できるかもしれませんが、結果的にミスリードになったのでは逆効果です。
論拠のない仮説は、立てるだけ時間の無駄と考える必要があるのです。
仮説を立てる際は「データドリブン」で判断する
私は仮説を立てる場合はもちろん、意思決定や企画の立案でも、すべて「データドリブン」で判断しています。
データドリブンとは、自分の経験や勘に頼らず、さまざまな状況から生まれるデータを基に物事を判断することです。
仮説とデータの関係は、医師の見立てとMRIの関係に似ています。
患者さんが、「お腹が痛いんです。たぶん胃です」と来院すると、医師は「胃が痛いのであれば、薬を出しておきますので、しばらく様子を見ましょう」と言って胃薬を処方します。
お腹が痛いという「事実」に基づいて、胃炎の可能性があるという「仮説」を立て、胃薬を処方するという「対策」を講じているのです。
それで治れば何も問題はありませんが、本当に痛い場所が胃ではなく、胃と密接に関係する膵臓であったとしたら、いつまで経っても患者さんの痛みはなくなりません。
その結果、痛みが続く→治療が長引く→病気が進行する……という事態を招いてしまうのです。