大使館内に5S委員会を設置

着任して1カ月ほど経過したころ、大使館内の執務室や倉庫をチェックしてみました。

本官やNS(現地採用スタッフ)の執務室には山のように書類を積み重ねている机も多く、なかには10年以上経過した、どう考えても不要な書類まで混じっている。

写真=iStock.com/Casanowe
山のように書類を積み重ねている机も多かった(※写真はイメージです)

各班の倉庫もひどいもので、埃をかぶった何年も前の本官(異動してもういない)の私物や用済みの資料、ファイルの類が放置されていました。

細かいことを言う、と思われるのは承知で、私は民間の産業界では常となっている「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」を導入することにしました。

5S委員会を作り、まず手本として、ある班の執務室と倉庫の現状写真を撮ります。

それから荷物や不要な書類、ファイル、私物の整理を1週間でおこなってもらい、整理後の写真も撮る。

委員会で前後の写真を比較し、整理整頓の具合を評価し、全体会議で発表する。

これをくり返して、館内すべてを整理整頓していきました。

同時に、ファイリング法も統一し、書類のデータベースを作って作成したらそこにインプットして所在を明確にするよう指示しました。

時間はかかりましたが、最終的に執務室も倉庫もきれいに整理整頓され、どこにどの書類があるかひと目でわかるようになりました。5Sは人材育成の一つの材料になることも説明しました。

意味のわからない直訳文が上がってくる

大使館の業務のひとつに外交公電の作成があります。

本省からの要請事項に対する報告、任国の政治経済社会情勢の報告に加え、大使館の会計報告にも公電を使用します。

通常の公電は、担当の本官が公電案を作成し、次席と私がチェックして本省に打電します。

ちょっと困りものだったのは、情勢報告でした。

新聞記事をはじめとする現地報道を訳すだけの場合も、関係者から集めた情報を加え分析して報告する場合もあります。

もちろん、個人差は大きいのですが、本官たちの中には、スペイン語は堪能でも、政治経済、特にビジネス関係の知識はさほどでもない人もいます。

専門用語を知らないため、意味のわからないスペイン語からの直訳文が公電案として上がってくることが、しばしばありました。