「5分以内で口頭報告」に苦情

とりあえず着任後1カ月は様子を見ることにしました。

1カ月過ぎても、なんの変化もなかったので、日程確認はやめて会議に新たな議題を加えることにしました。

各本官が担当業務の状況を5分以内で口頭報告することにしたのです。

限られた時間での口頭報告は、簡潔に要領よく内容をまとめる練習にもなるし、本人の頭の整理にもつながります。

しかし次席が「今までやったことがないので、若い本官はうまく報告できないでしょう」と軽く苦情を呈してきました。

だから練習するのだ、ということばを飲みこみ、苦情は無視しました。

実際、最初はなにを言いたいのかわからない報告や、照れたり苦笑いしたりしてその場をごまかす報告もありましたが、修正する点を指摘することで徐々に改善されていきました。

もともと能力は高い

赴任当時の大使館では、次席だけがキャリア外交官で他の本官はノンキャリアでした。

大使の私が民間出身なので、次席は「自分が大使館の事実上のトップで、いちばんよく業務を知っているのだから、従来のやりかたを守らねば」と思っていたのでしょうか。

しかし、前例踏襲を固守するあまり業務全体がきわめて非効率化していることに無頓着だったのは問題です。

業務全体がきわめて非効率化していた(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/Oleg Elkov
業務全体がきわめて非効率化していた(※写真はイメージです)

口頭報告は私にとっても意義あるものでした。本省への報告事案の詳細や背景、裏話など文書には記載されない情報もあり、臨場感もあってよく理解できます。また未知の専門用語や略語もその場で質問できるので時間と手間が省けます。非常に役立ちました。

回を重ねるうちに、情報を共有することで他部署から問題の解決策が示されたり、問題が自分の業務に関わってくる案件だとわかり協働して対処しようという展開になったり、という前向きな話し合いもおこなわれるようになりました。

本官たちは、もともと能力は高いので、ちょっとしたヒントやアドバイスが大きな効果を生みます。