オンは“穴場”の中距離をサポート
プーマだけでなく、スイスのスポーツブランドであるオンもユニークな視点で日本の市場に食い込んでいる。2010年の創業からわずか12年で世界60カ国以上、6500店舗で取り扱われるほどの人気を誇るも、日本ではタウンシューズとしてのイメージが強いだろう。
今年の箱根駅伝で着用していた選手はいなかったが、今年度は合同会社TWOLAPSが運営する「今年、一番強い中距離走者を決める大会: TWOLAPS MIDDLE DISTANCE CIRCUIT」とパートナーシップ契約を締結。中距離レース(800m・1500mなど)から国内シェアを高めていく戦略を実践中だ。
オンはグローバルな取り組みとして、「On Track Nights」という陸上競技場を舞台にしたレースをウィーン、パリ、ロンドン、ロサンゼルス、メルボルンの5カ所で開催中。オン・ジャパン共同代表の福原裕一氏は、「ぜひ日本でも同じフォーマット、同じ熱狂でやりたい」という構想を持っている。
なぜ長距離・マラソンではなく中距離なのか。オンの狙いは明確だった。
「駅伝とマラソンに注力しているブランドは少なくありません。われわれは後発ブランドなので、今から同じようにやるとしてもリソースの問題もあり、互角には戦えない部分があります。その点、中距離レースをサポートすることで、良い意味で軸をズラした戦い方ができる。まずはミドルに取り組み、結果を残す。最終的には駅伝やマラソンにも影響を与えたいと考えています」(福原氏)
MIDDLE DISTANCE CIRCUITを運営するTWOLAPSの代表であり、男子800m元日本記録保持者・横田真人氏がオン・ジャパンのアスリートストラテジー アドバイザーという役職に就任した。その影響はすでに出ている。
今季のトラックレースでは中距離種目を中心にオンのウエアやシューズを履いている選手が目立っているのだ。これは昨季にはほとんど見なかった光景だ。Onを着用する選手が活躍することで、陸上界にも愛用者が増えていくことだろう。
スポーツメーカーは良い商品を作るだけでなく、自らの手で“ブーム”をつくっていく必要がある。年間2000億円規模を誇る国内のランニングシューズ・アパレル市場。プーマやオンの“本格参戦”でますます激化し、群雄割拠の時代に入ったと言えそうだ。