スティーブ・ジョブズは我が子にスマホを使わせなかった

じつは、デジタル機器が子どもの脳に及ぼす影響を開発者たちはよく知っているのではないかと思います。

というのも、iPhoneやiPadを世に送り出した、アップルの創業者のひとりでカリスマ的なCEOであったスティーブ・ジョブズが、子育てではローテク主義を貫いたというのは有名な話です。

ニューヨーク・タイムズの記者がiPad発売直後の取材で、ジョブズに「あなたの子どもたちはこの製品をどんなふうに楽しんでいるのか」と質問したところ、「うちの子たちは使っていない」と答えたそうです。さらに「自分の子どもたちがデジタル機器に触れる時間を厳しく制限している」と明かしたのです。

テクノロジーで世界屈指の大富豪となった、マイクロソフトの創業者のひとり、ビル・ゲイツも子どもたちには14歳まで携帯電話を持たせず、夕食のときは取りあげていたと語っています。

スマホには明らかに毒性がある

ジョブズやゲイツのローテク子育ては、シリコンバレーの成功者たちの例外ではありません。

川島隆太『スマホ依存が脳を傷つける デジタルドラッグの罠』(宝島社新書)

欧米のハイテク企業のトップたちは、身体活動、芸術、体験学習などを重視し、12歳未満のスクリーンタイム(画面を見る時間)を禁止するといった自然教育を実施する学校にわが子を入学させ、子どもたちが6年生になるまでコンピュータートレーニングを受けさせないといった子育てを行っているそうです。

開発者側はここまで神経質に、わが子をデジタル機器から守ろうとしています。

それならば、たばこの箱に「喫煙は、さまざまな疾病になる危険性を高め、あなたの健康寿命を短くする恐れがあります」「ニコチンには依存性があります」と書かれているように、スマホやタブレットの画面にもときどき「デジタル機器の長時間使用は子どもの脳に悪影響を及ぼすおそれがあります」「スマホには依存性があります」といったメッセージが表示されるようにしてほしいものです。

そうしなければならないほど、スマホにはあきらかな毒性があります。その毒から子どもを守る方法を、社会全体で考えていかなければならないと思うのです。

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