そのほか、横井氏は次のようなポイントをあげる。

「一般的な感覚からファッションの域を超えると思われる入れ墨は、解雇を後押しする材料の一つになります。またマネジメント職で部下や取引先に入れ墨を誇示して、事実上のパワハラが起きているようなケースも解雇は認められやすいでしょう」

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入れ墨が発覚した社員、解雇は可能か?

以上のように、入れ墨そのものを理由に社員をクビにするには一定のハードルがあり、ほとんどのケースにおいて、解雇にはプラスαの条件が必要になる。どうしても入れ墨社員を雇いたくないのなら、採用段階で遠慮願うしかない。採用前はまだ労働契約関係に入っていないため、企業に採用・不採用を決める自由が幅広く認められている。

ただ、求職者が正直に申告するとは限らない。横井氏が実務的なテクニックとして紹介してくれたのは、内定前に実施できる健康診断だ。

「スーツのときは隠れていた入れ墨も、健康診断で発見できることがあります。ただ、内定は条件付きながら労働契約が成立します。そうなると内定取り消しは容易ではなくなることもあります。通達で若干、問題視されていますが、法的には許容されている『内定前の健康診断』を実施し、その結果を踏まえて最終的な入社意思を確認するという採用プロセスにしておくことが大切。このプロセスを明確にしておけば、健康診断後の意思確認の段階で労働契約が成立すると解釈されやすくなります」

(図版作成=ライヴ・アート)
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