日本の縦割り医療の弊害

【鳥集】インスリンで人殺しをしようと思ったら、できますからね。

【長尾】そうなんですよ、怖い話なんです。縦割り医療の弊害というのは、つまりそういうことなんです。このように認知機能の低下も、糖尿病の悪化に関係する。だけど糖尿病専門医は、糖尿病は診るけど認知症には気づかないんですね。認知症でインスリンの自己注射ができないなら、ほかの方法を考えないとダメなんですが、認知症の人の血糖管理という概念がほとんどないんです。

患者一人ひとりに合わせた処方を考えないといけない

そもそも認知症の人に、「1日4回打ち」なんていうのはハードルが高すぎます。しかも、超速攻型インスリンを朝食後に6単位、昼食後に4単位、夕食後に4単位打って、寝る前に持続型インスリンを8単位打つといった複雑な作業を指示されているのです。

鳥集徹編著『医者が飲まない薬 誰も言えなかった「真実」』(宝島社新書)

だから本当は、薬剤師が時々患者さんの家に出向き、「ちょっとお薬を見せてください」と冷蔵庫なんかも開けさせてもらって、正確に飲めているのか、どれだけ飲めているのかをチェックしないとダメなんです。それで、もし飲めていなかったら、「もっと簡略化しましょう」――たとえば、「1日に1回にしましょう」というふうに、患者さんやご家族とよく話し合わないといけない。

一人暮らしで軽い認知症のある方なんかは、家に行けばもう、薬だらけです。本来であれば、こういう問題にも気がつかないといけないのですが、医学教育では何も教えない。

【鳥集】そうでしょうね。

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